奈緒「志保、コタツはいつでも出せるんやで」
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31:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:29:18.16 ID:3iKMEwHU0
「楽しそうやんけ」
「……ライアールージュなんで、澄ましてますけど」
「あげあしをとらないっ!」

 歌がきこえる。私の歌だ。
 まだ幼い私が、これから起きる色々な事を知らない私が、それでも懸命に歌っている。

 ステージ裏を思い出す。
 エミリーが泣き出してしまって、けれど、それが逆に会場の盛り上がりを高めてもいた。
 万雷の拍手は、次に歌う演者へのプレッシャーにもなる。

 舞台袖で待機していた私は、見事に足がすくんでいた。
 流れに水を差してしまうんじゃないか。
 次の静香にうまくバトンを渡せないんじゃないか。
 起こりうる暗い可能性に、足を取られてしまいそうだった。

 ばしん、と背中を叩かれる。驚いて振り返るとプロデューサーさんがいた。
 静香がいた。奈緒さんがいた。みんながいた。

 それだけで、私の心は熱く滾った。
 コタツのような日々がなければきっと生まれない熱量で、それもまた必要だったのだ。矛盾しているかもしれないけれど、確かにそうだった。

 14歳の北沢志保は、自分で言うのもなんだけど、中々良い顔で歌っている。
 今の私はどうかな? こんなにうまく歌える自信はないけれど、でも、尻尾を撒いて逃げ出すのは性に合わない。

 何か伝えることがあるはずだ。伝えたいことがあるはずだ。

 私は奈緒さんの携帯を手に取り、ゆっくりとメールを打った。
 長くなってもかまわない。
 ただただ、書き留めた。

 あの冬の日、コタツをばらして、組み立てたみたいに。


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