【モバマス】琥珀色のモラトリアム
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22:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:32:22.54 ID:vBuyWfgt0
「お前を信頼しているからだ。飛鳥なら、一人でも大丈夫だろう?」

そう、騙った。


23:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:32:50.36 ID:vBuyWfgt0
あぁ、そうじゃない。そうじゃあないんだ。
ボクが欲しい言葉はーー

「……キミは、いつもそうだ……」

以下略 AAS



24:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:33:30.54 ID:vBuyWfgt0
「キミは……キミは!いつだってそうやって一歩退いて己を隠してしまう!傍観者のつもりか!?それとも愚か者に助言を与える賢者か!?どうして…どうしてボクの隣にいようとしてくれない!!」

決壊した心から溢れ出した感情が、怒鳴り声となって撒き散らされる。抑え込むことも出来ず、激情のままにテーブルを打ち叩き立ち上がる。デスクに積まれた書類の山を左手で叩き潰しながら、右の手で彼のネクタイを掴み、犬歯を剥き出しにしてただ只管に叫んだ。


25:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:34:16.70 ID:vBuyWfgt0
「キミはあの時ボクに言ったじゃないか!『甘えるな』と!蘭子と心から向き合えと!!理解した心算になったままで終わるんじゃなく、真に理解り合わなければならないんだと!それなのにどうしてキミは決してボクの前でその仮面を外してくれない!『担当だから』!?キミはキミの意志ではなく、義務としてボクを導いているのか!?ボクには……ボクにはもうキミの言葉が理解らない!キミの心が理解らない!今はその優しささえ気に触る……!」

頬を伝う雫が妙に生暖かく感じる。
理解らない。どうしてこんなにもボクは喚いているのか。どうしてこんなにも、ボクは哀しいのか。


26:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:34:52.14 ID:vBuyWfgt0
「教えてくれプロデューサー……ボクはキミにとって一体『何者』なんだい……?」

その先の言葉を紡ぐことが出来ず、支えを失ったように冷たい床へとへたり込む。
力無く両腕で頭を抱え、情けなく嗚咽を漏らしながら。


27:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:35:33.74 ID:vBuyWfgt0


ほんの数十秒間ほどの沈黙が、永劫のように感じられた。
PCと空調の稼働音が嫌に大きく聞こえる。

以下略 AAS



28:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:36:05.66 ID:vBuyWfgt0
「……何故謝る。謝らなければならないのはボクの方なのに……」

「いや、俺にも……謝らなきゃいけない理由がある」

彼はそっと、躊躇うかのように臆病に、ボクの頭をその手で触れた。
以下略 AAS



29:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:37:13.11 ID:vBuyWfgt0
「キミは……プロデューサーは……影絵を見せられて全てを知っているつもりになっていたボクを、洞窟から連れ出してくれたプラトンだ。閉じたセカイをこじ開けて、ボクに無知を教えてくれたソクラテスだ。キミは、ボクが欠かす事の出来ない片翼で、捻くれ者のボクを馬鹿にせずに語り合ってくれる友人で、少し抜けたところはあるけれど信頼できる大人で、ボクの……」


30:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:37:43.83 ID:vBuyWfgt0

「飛鳥」

言葉を遮ったのは、間違いなく意図的なもので。
でもそれを指摘するには、その声は余りにも虚が満ちていた。
以下略 AAS



31:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:38:53.78 ID:vBuyWfgt0
「俺はお前に、ずっと嘘をついていた。お前をお前自身の夢へ導くかのように騙った。お前の理想の大人であるように偽った。……飛鳥、俺はな。お前に俺のような大人になって欲しくないんだ」

「それは、どういう……」

「少し、昔話をしようか」
以下略 AAS



32:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:40:14.44 ID:vBuyWfgt0

昔々あるところに、夢に燃える少年がいた。
別にそう高望みをしていた訳じゃなかった。それでも、自分には特別な力があるんだと、何かを成し遂げることが出来るんだと信じて、色々なことに挑戦していた。器用貧乏な自分でも誰かに認めて貰いたくて、懸命に懸命に努力した。
でも、ダメだった。
よく「努力は裏切らない」って言うだろう?
以下略 AAS



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