北条加蓮「どうしようもない話」
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5:名無しNIPPER[saga]
2018/02/13(火) 18:37:15.38 ID:K48b6BSl0

「ちょ、加蓮。いきなり何を」

「胸の中で話されるとくすぐったいなー」

「なら離し――んが」

「聞こえなーい」

 ぎゅー、と彼の顔を胸に押し付けるようにして抱きしめる。腕の隙間から見える彼の耳がほんのりと赤みを帯びている。

「耳、赤いね」

「うるさい」

「お気に召さなかったかな? なんとなく、こういうことをされたいのかなー、と思ったんだけど、外れだった?」

「……」

 当たりだったようだ。思わずくすくすと笑ってしまう。

「そっかー。これは確かに言えないね」

 あと、確かになさけないかも。女子高生に抱きしめられている成人男性の姿というのは、あまり見せたいものではないだろう。

「だから言いたくなかったんだよ。こんな姿、誰かに見られたら……」

「今は二人きりだから大丈夫だよ。それに、今更こんな姿を見たくらいで失望なんかしないって」

「そんなに普段からなさけない姿見せてるのか……」

 そう受け取るんだ。今のはそういう意味じゃなかったんだけど……まあ、訂正はしなくてもいいかな。恥ずかしいし。

「それはそれとして、今のお気持ちは? 念願叶って夢心地?」

「戸惑い半分」

「もう半分は?」

「わかってるだろ」

「わからないなー。ちゃんと口に出さないと伝わるものも伝わらないよ?」

「……」

 抱きしめているから顔は見えないけれど、今どういう表情をしているのかはわかった。たぶん、苦虫を噛み潰したような顔してる。

「ほらほら。プロデューサー?」

「……気持ちいい、です」

「おっぱいが?」

「おっぱい言うな」

「アイドルのおっぱいが気持ちいい、なんて……いい趣味してるね」

「今の状態だと否定できない」

「だよねー」

 ふっ、と微笑んで、抱きしめる力を強くする。そのまま彼の髪に鼻と頬を擦りつける。
 くすぐったい。微かに汗のにおいがする。
 いいにおい、ではないけれど、安心する。
 胸の奥にある固い何かがすっとほぐれて、ずっとこうしていたいような気持ちになる。



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