ロールシャッハ「嵐を呼ぶ、救いのヒーローたち」
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27:名無しNIPPER[saga]
2018/02/15(木) 22:30:39.48 ID:Jw6MsEa80
日誌 ロールシャッハ記

2000年 6月26日

手掛かりは依然としてつかめない。

――ここは平和だが、奇妙な街だ。

時があまりにも早く過ぎていくようだ。
にもかかわらず、実際はまるで一秒も時が経たないような感覚が、同時にある。

十年後にここを訪れて見るのもいいかもしれない。
俺がまだ生きていれば――また、世界も息をしていればの話だが。


それでも取り残されていくものはある。

路地裏の奥に“カスカベ座”という映画館を見つけた。
ニューヨークのものと比べると、あまりにも小規模でみすぼらしい劇場だ。
それが今は廃墟であることを差し引いても。


おそらく立地条件や土地の権利などの都合上、未だ取り壊されずに残っているのだろう。


中のガラスケースに、色褪せたブロマイドがまだ残っていた。

どれも知らない映画ばかりだ。
ここはアメリカではないことが、俺のいたアメリカのある世界ではないことを改めて知らされる。
ここに俺の知る映画など、存在するはずがないのだ。


……だがカードの中に、一枚だけ西部劇らしきものを見つけた。
この映画が存在したということは、かつての祖国の先人と似たような文化や歴史をたどった時代が
この星のどこかにあったということだ――もしくは単なる創作か。

タイトルは書かれていない。この一枚からだけでは、この映画がなんなのかはまるでわからない。

カードには典型的な白人のガンマンと、どういうわけか東洋人の少女の姿が写っている。
インディアンではない。

しばらくそれを眺めたあとで、ケースを割ってその一枚を拾った。

このカードには、これから日誌の栞として働いてもらおう。




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