1: ◆W56PhqhW.M
2018/02/26(月) 14:16:12.76 ID:l4IqRebF0
クレブルネタを書いていたらクレブルの衣装が追加されていた……だと……
よくあるネタですが、見てくださると歓迎です!
SSWiki : ss.vip2ch.com
2: ◆W56PhqhW.M
2018/02/26(月) 14:17:27.70 ID:l4IqRebF0
「話にならないわ!」
志保さんがそう叫ぶとレッスン室は静寂に包まれました。今日はクレシェンドブルーの全体練習日、でもレッスン開始からギクシャクとした空気は拭えず、動きはバラバラ、まるでそれぞれが別の曲を踊っているかのようでした。
「あなたたち、ちゃんとやる気はあるの!? レッスンの時間は少ない、その少ない時間すらお喋りや団らんにばかり。私たちはプロなのよ!? 学校の部活動気分でいられると困るの!!」
3: ◆W56PhqhW.M
2018/02/26(月) 14:18:35.35 ID:l4IqRebF0
「いつまで経っても完成度は上がらない、なのに遊ぶ時間は減らないばかりか増える一方! ……もうあなたたちとはやっていけないわ。私、ユニットを抜けるから」
「ちょっと、志保! 何もそこまでしなくてもいいじゃない! 星梨花もみんなも手を抜いているわけじゃない、みんな一生懸命やってるよ! だから、ちゃんとできるようになるって!」
すかさず静香さんがフォローに回ります。私は志保さんのことがちょっと怖くて、何も言えなくなります。だからいつもこんな時はいつも静香さんに助けてもらってます。
4: ◆W56PhqhW.M
2018/02/26(月) 14:19:55.58 ID:l4IqRebF0
「できるっていつ? 一年後? ……私には時間がないの。悠長な遊びに付き合ってあげる暇なんてないわ」
そう言い放って志保さんは、先程からこの騒動を離れて見ていたプロデューサーさんのもとに早足で近づきます。いつもは余裕があって大人なプロデューサーさんも、今回ばかりは焦った顔をしていました。
「さっきの件見てましたよね? そういうことですから私をメンバーから外してください」
5: ◆W56PhqhW.M
2018/02/26(月) 14:20:49.75 ID:l4IqRebF0
「っ! どうして!?」
「どうしてもだよ。……プロなんだから頼む」
志保さんは唇を噛みしめてプロデューサーさんの言葉を呑み、ただ一言「分かりました」と返しました。何とか志保さんの脱退は阻止できたものの、深く刻まれた傷跡は癒えることなく、結局、公演は大失敗に終わってしまいました。そこからの記憶はありません。気づいた時にはみんな別々の道を歩いていました。
6: ◆W56PhqhW.M[sage saga]
2018/02/26(月) 14:22:42.98 ID:l4IqRebF0
*
あの時のことを夢に見て、ハッと私は覚醒しました。嫌な目覚めでした。体中、気持ちの悪い汗でびっしょりで、シャワーを浴びようと思った矢先に、ママが私を呼ぶ声が聞こえました。シャワーは後でいいかと思い、とりあえず私はママのいるリビングに向かいました。
「なあに〜ママ〜?」
7: ◆W56PhqhW.M[sage saga]
2018/02/26(月) 14:23:44.46 ID:l4IqRebF0
「何もないじゃん!」
「星梨花、寝ぼけてるの? あなた、〇月△日が一際目立つようにしてたじゃない!」
その日付に目をやります。そこには「ミーティング!」と可愛い文字で書かれていました。確かその日はクレシェンドブルーの初顔合わせの日だったっけ。でも……、なんでこの日?
8: ◆W56PhqhW.M
2018/02/26(月) 14:24:41.55 ID:l4IqRebF0
時計をみると遅刻もいいところでした。私は最低限の準備だけして、ぐしゃぐしゃになった髪も直さずに外へと駆け出していきました。
9: ◆W56PhqhW.M
2018/02/26(月) 14:25:33.76 ID:l4IqRebF0
劇場に着くと既に他の四人は揃っていました。私の遅刻にはプロデューサーさんも、志保さんも驚いていました。私は全員にしっかり謝ってその場を収めました。
そこからはプロデューサーさんがユニット結成の概要を話し始めました。リーダーが静香さんであること、新曲を披露すること、そして絶対に失敗できないライブであること。既にこの件について一度聞いている私は話の間、志保さんのほうをチラチラと見ていました。リーダーに静香さんが指名された時に一瞬顔をしかめたりしましたが、後は真剣な眼差しでプロデューサーさんを見つめていました。一度志保さんと目が合いましたが、まるでそんなことがなかったかのように、志保さんの視線はプロデューサーさんの方へと戻りました。
10: ◆W56PhqhW.M
2018/02/26(月) 14:26:59.78 ID:l4IqRebF0
それからは静香さん主導の下、ユニット活動が始まりました。歌やダンス、プロモーションなど、前の時と同じように忙しい日々を過ごしていきました。残念ながらこれらのことに関する記憶は都合よく残っているわけではなく、私は前回と同様に一から必死に覚えていきました。
きっとこのやり直しは神様がくれたチャンスなんです。前回は私の実力不足で皆さんにご迷惑をおかけしたので、私は仕事と学校以外、さらには睡眠を削ってまでレッスンに明け暮れました。ちょっとしんどいけど、これでライブが無事に成功するならこれでいいよね。
11: ◆W56PhqhW.M
2018/02/26(月) 14:28:03.89 ID:l4IqRebF0
そうして月日は流れ、ライブ一週間前。最後の全体練習が行われようとしています。これまで、志保さんも私が原因で怒ったりすることはありませんでした。今回こそいけると、私は手ごたえを持っていました。
「ねぇ、星梨花」
志保さんが心配そうな顔で私に尋ねます。静香さんも茜さんも麗花さんも同じような表情で私を見つめていました。
12: ◆W56PhqhW.M
2018/02/26(月) 14:28:40.18 ID:l4IqRebF0
その十分後、私は過労で倒れて救急車で運ばれました。診断結果は一週間以上安静。公演は中止となりました。それ以上は覚えていません。
13: ◆W56PhqhW.M
2018/02/26(月) 14:29:28.07 ID:l4IqRebF0
*
強烈な不快感と共に、私は自分のベッドで目覚めました。確か昨日は病院のベッドで眠ったはず…… 二度目ともなると物事を冷静に捉えることができるようですね。どうやら私は三周目に突入したみたいです。私は身支度などをしながら、今回どうやって成功に持っていくかなどを簡単に考え、そしてプロデューサーさんとクレシェンドブルーの皆さんが待つ事務所へと向かいました。
三度目のプロデューサーさんの説明と三度目の顔合わせが終わり、三度目のユニット活動がスタートしました。前回は頑張りすぎが原因で失敗しましたが、ある程度の手ごたえは感じられたので、今回は練習も急速もバランスよく取り組むことにします。何といっても三度目の正直っていいますしね。今回こそは、と意気込み、また新たにレッスンや仕事に励みました。
14: ◆W56PhqhW.M
2018/02/26(月) 14:30:24.05 ID:l4IqRebF0
問題といった問題も発生せずについにライブ一週間前になりました。前回はここで倒れてしまいましたが、今回の私は超健康優良児そのもの。誰がどう見たって今日突然倒れるとは思わないでしょう。万全の体勢で私は最後の全体練習に臨みました。
ここで私は過去にないほどのパフォーマンスを発揮しました。頭で考える前に体が動き、一切の音程のブレのない歌唱を披露することができました。油断していたわけではありませんが、今回の公演の成功を確信していました。
15: ◆W56PhqhW.M
2018/02/26(月) 14:31:02.94 ID:l4IqRebF0
私が自信に満ち溢れている一方で、他の四人はどこか不安そうな顔をしていました。プロデューサーさんも苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていました。練習終了後、急にプロデューサーさんがミーティングを開きました。普段ミーティングは一日の始まりや終わりの時だけにするものであって、このタイミングで開かれたのは初めてでした。プロデューサーさんが議題に挙げたのはただ一つ、今回のレッスンの反省会でした。
最初に話すのは私だったので、自分が思ったままのことを言いました。上手に歌えた、踊れた、自惚れではありますが本番が楽しみなどと、嘘偽りのない本心を打ち明けました。
16: ◆W56PhqhW.M
2018/02/26(月) 14:31:57.37 ID:l4IqRebF0
しかし、他の四人は違いました。合っていない、だとか、何か違う、だとか、そういった感覚的なことで不安を抱いているようでした。特に印象的だったのは静香さんが言った、「ユニット活動をしている感じがしない」でした。私はみんなと感覚がズレていることに少し恐怖を覚え始めました。最後にはプロデューサーさんが総括して、
「お前たちは五人全員がソロとしてステージに立ってるようだ」
と言って、その日のミーティングは終わりました。結局、今回も失敗に終わりました。
17: ◆W56PhqhW.M
2018/02/26(月) 14:32:51.46 ID:l4IqRebF0
*
そこからは似たようなループが続きました。私も要領を得てきたのか、体調と練習のコントロールが上手くなってきたように思います。一週目より二週目、二週目よりも三週目と、レベルアップしているように思います。しかし、何度繰り返しても皆さんが感じる微妙な違和感を解消することはできませんでした。六週、七週……、と繰り返していくうちに私の心は憔悴していきました。そして八回目、ついに私は最初の段階でユニット活動を辞退しました。
18: ◆W56PhqhW.M
2018/02/26(月) 14:33:30.77 ID:l4IqRebF0
クレシェンドブルーは私抜きの四人で活動することになりました。予想とは反して、心残りはありませんでした。むしろやっと肩の荷が下りて解放感に満ちていました。クレシェンドブルーのことは気にはなりますが、きっとあの四人なら成功させてくれるでしょう。
そんなある日、私は静香さんから二人で話がしたいと言われて、カフェに行くことになりました。忙しい合間を縫って私との時間を設けてくれたので、少しでも静香さんの気を楽にできたらと、意気込んでいました。
19: ◆W56PhqhW.M
2018/02/26(月) 14:34:39.07 ID:l4IqRebF0
静香さんとは色んなことを話しました。クレシェンドブルーのことであったり、未来さんや翼さんのこと、学校のことや他愛のない雑談など、楽しい時間を過ごしました。
そろそろ帰ろうかと思い始めた頃、静香さんは急に真面目な顔になりました。それを見て私は少したじろいでしまいましたが、静香さんは表情を崩す気はありませんでした。重苦しい沈黙を破るように、ゆっくりと、静香さんは語りかけます。
20: ◆W56PhqhW.M
2018/02/26(月) 14:35:17.21 ID:l4IqRebF0
「ねぇ、星梨花。今何周目?」
21: ◆W56PhqhW.M
2018/02/26(月) 14:36:19.83 ID:l4IqRebF0
その言葉は今の私には鉛よりも重く、そしてナイフよりも鋭く私の胸に突き刺さりました。冷汗が止まりません。必死に何か言い訳を考えていると、静香さんの方から切り出してくれました。
「初めてクレシェンドブルーを結成した時、私は失敗してしまったの。その後、我にもなく『お願いします、もう一度チャンスをください!』なんて柄にもなく祈ったら、ユニット結成当日に戻ったの。幸運だと思ったわ。そこからは本当に色々な作戦を考えて、ありとあらゆる対策を講じたわ。まあ、全部失敗だったんだけどね」
驚きました。まさか静香さんまで、あの終わりのない迷路に迷い込んでいたなんて。
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