【オリ】「君は、自分が壊れてしまうほど人を好きになった事があるかい?」
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2:名無しNIPPER[sage]
2018/03/09(金) 12:03:28.19 ID:uzy05gP60
「あぁ、その中でも悲劇、特に悲恋ものばかりだ」

彼は相変わらず笑っている。俺の返答が期待通りで嬉しいのだろうか。もしそうならかなり捻た性格だ。自分も人の事を言えないが。

「まぁ、ロミオとジュリエットくらいなら読んだ事はあります」
以下略 AAS



3:名無しNIPPER[sage]
2018/03/09(金) 12:04:36.31 ID:uzy05gP60
「望んでいるからと言って、狙って恋できるものでもないでしょう」

段々彼が何を言いたいのか解らなくなってきた。先程感じた焦りは勘違いだったのか。今の彼からは何の脅威も感じないし、彼の不敵な笑みは今や滑稽にすら映る。

「もちろん、狙ってするものではないさ。しかし、だ。事実は小説よりも奇なりと言うではないか。仮に君がその様な状況下に置かれたらどうするね?」
以下略 AAS



4:名無しNIPPER[sage]
2018/03/09(金) 12:06:04.68 ID:uzy05gP60
新学期が始まって、ようやくクラスメイトの顔を覚えられてきたかという頃、クラスに転校生がやってきた。

「よろしくお願いします」

凛とした声で挨拶し、肩ほどの髪を揺らしお辞儀をする。そんな彼女を見て、俺は、綺麗だ、と思った。しかし、それ以上の感情は湧き上がって来ず、第一印象で抱く感情なんてこんなものか、と少しがっかりした。一目惚れが出来たら、少なくともこの退屈な日常からは抜け出せたのかな、と端正な顔立ちを凝視した。
以下略 AAS



5:名無しNIPPER[sage]
2018/03/09(金) 12:07:42.25 ID:uzy05gP60
渋々、と言った感じで立ち上がると、教室を出て行く。普段のHRの静寂を取り戻した教室で、彼女は手持ち無沙汰なのか、教卓の横でオロオロしている。
顔を左右に振る度に流れるミディアムくらいの黒髪が煌めいていた。数分で戻ってくると、自身の机の後ろにたった今運んできた机を置く。
その女生徒は俺の近くの席に、とはならず俺とはほぼ対極の位置に陣取る形となった。何だ、やっぱり劇的な事なんて何もないじゃないか、と平穏な日常を噛みしめた。

転校生が来る、という恐らく学生にとって五本の指に入るくらいに大きな出来事があっても、自分は変わらず日常から抜け出せない、その事実が、お前は酷くちっぽけなものだよ、と言われているようで強い嫌悪を覚えた。
以下略 AAS



6:名無しNIPPER[sage]
2018/03/09(金) 12:08:28.20 ID:uzy05gP60
図書館に通いだしてもうじき一ヶ月が経とうとしていた。
その頃には、気付くと恋愛小説を手にしている自分に驚くのも飽きてきていた。
最初に何気なく恋愛小説を手に取り、存外に面白かったので、たまに読んでいたが、俺の好きなジャンルはやはり推理小説で変わりなかった。
変わりなかったはずだのに、図書館についてまずは推理小説を、と考えながら手を伸ばしているのが恋愛小説だった。
初めて気付いた時には驚きを隠せず、思わず叫び声を上げ椅子からずり落ちていた。
以下略 AAS



7:名無しNIPPER[sage]
2018/03/09(金) 12:10:46.73 ID:uzy05gP60
図書館に通いだして2ヶ月程経っただろうか、という頃。
その日も最終下校時刻まで図書館に籠っていた。
辺りはもう薄暗く、チカチカと光る街灯が不気味さと非日常感を醸し出している。
明るい内の気温は未だ高いが日が沈めば若干肌寒く感じる。
その肌寒さも合わせてこの時間の通学路は嫌いではない。
以下略 AAS



8:名無しNIPPER[sage]
2018/03/09(金) 12:12:26.31 ID:uzy05gP60
翌日の放課後、俺は珍しく図書室には向かわず昨日と同じ道を歩いていた。
昨日の遭難未遂の際に、本屋を見つけたのだ。
大型チェーンではなく、個人経営のお店らしく、新しい本も入荷しているし、古本も取り扱っているような所だった。
店構えはボロボロで、儲かっているのか心配したくなる様な有様だが、こういうお店には掘り出し物があるかもしれない、と思いその日訪れてみた訳である。
面白そうな本を探すべく、パラパラと本を捲ってみる。
以下略 AAS



9:名無しNIPPER[sage]
2018/03/09(金) 12:13:19.84 ID:uzy05gP60
それから俺は、学校帰りに本屋に寄り、散歩して帰るのが日課になった。
母親には、ガールフレンドと放課後デートしているんじゃないか、と言われた事もあったが、気分の高翌揚具合は放課後デートと比べても遜色ないくらいだったので、答えに詰まった。
それを肯定と受け取った母親が勝手に勘違いして妄想を始めたが、否定するのも面倒だったので適当に話を合わせていた。
彼女の名前を聞かれたので、咄嗟に例の転校生の名前を出してしまった。
後で自室に戻った時、恥ずかしさで[ピーーー]るのではないかとまで思った。
以下略 AAS



10:名無しNIPPER[sage]
2018/03/09(金) 12:14:34.85 ID:uzy05gP60
昼間は授業を聞き流し、放課後の日課を待ち望む。
そんな毎日を過ごす内に、俺の中でそれが日常と化してしまった。
日課という時点で日常ではないかと思われるかもしれないが、それでも初めの内は毎日刺激があった。
慣れとは本当に恐ろしいもので、あんなに昂りを覚えていた道もその頃には見慣れた風景になっていたのだ。
そこまで考えた所で、やはり自分は非日常を求めていたんだ、と思い知った。
以下略 AAS



11:名無しNIPPER[sage]
2018/03/09(金) 12:15:36.64 ID:uzy05gP60
しかし、そんな事を続けていると、段々と創り出した人物が、俺の想像とは関係なく動き出すようになった。
最初にその事に気付いたのは、自称未来人の俺が現在の俺に語りかけてきた時だった。
彼は、意味深な事を言って俺の前から姿を消した。
最初は、そんな小説を読んで無意識に再現してしまったのかと思った。
しかし、いくら記憶を掘り返しても、彼の台詞は聞き覚えも見覚えも無かった。
以下略 AAS



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