【デレマス】デレP「宝石になった日」
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6: ◆ANRdHn0Tts[saga]
2018/04/17(火) 08:22:21.11 ID:3cTkaN/s0
 コンビニに寄ってアパートに帰り、母からのメールを確認してテレビをつける。

「え……えー……今ナナは、高度何千メートルかの飛行機の中にいます! あれ、何百メートル……? もう、よくわかりませんけども!」

 おそらくは、バラエティの企画なのだろう。テレビ画面では、自称宇宙人が飛行機の中で浮いていた。

「み、見てくださいぃ……飛行機が落ちると、機内が、無重力になる、という……わわわっ……そんな感じの体験を、していますー!」

 ウサミン星……からやってきたというアイドル、安部菜々。彼女の姿を、最近よくテレビで見るようになった。
 明らかにそういう設定で売り出しているのは確かなのだけど、それを分かった上で楽しんでいるファンが多いのだそうだ。宇宙人だから、とわざわざ海外にまで無重力体験のロケに行くのだから、それなりに人気を博しているのだろう。

「って、これ、落ちてるんですよね? そのまま地表まで、まっさかさまなんて……ないですよね? ナ、ナナ、まだ死にたくないですよぉ!」

 落ち続ける、ジェットコースターのようなものだろうか。初体験となると、やはりそれなりの恐怖はあるのだろう。
 周囲にポーチや携帯を浮かべながら、彼女は次第に涙目になっていた。ワイプでは司会のベテラン芸人が、手を叩いて笑っている。

「まだ、にじゅ……十七年しか生きてないのにぃ! せっかくこれから、楽しくアイドル人生を過ごせるってとこなんですから!」

 十七歳、と言い張れば通用するような童顔が、恐怖に歪んでいた。じたばたと手足を動かしているせいで、髪の毛やらスカートやらがひらひらと舞い、体全体もくるくると横回転を始めてしまっていた。あれは……酔うだろう。
 よくやるなあ、と思う。
 きっと、仕事を選べるほどに人気があるわけでもないのだろう。彼女が本来やりたい仕事がバラエティではないことを、僕はよく知っていた。
 永遠の十七歳、安部菜々。
 姉さんが僕よりも年下になってしまってから、もう何年経ったのだろう。

「あの、この無重力、途中で止められませんか? その、スカートが、あわわ……だ、誰か助けてぇー!」

 僕はスマホを取り出す。
 久しぶりに、直接姉の顔を見たくなった。


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