高垣楓「君の名は!」P「はい?」
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54: ◆PL.V193blo[sage]
2018/04/20(金) 20:56:55.52 ID:NMaauvKO0
「みずき姉さま。お心遣い、痛み入ります。みずき姉さまの真剣に怒って下さるところ、わっちは好きです。川島さまも、姉さまのそんな情の深いところに惚れておられるのでしょうね。」

駄目な人が好きなんですねぇ、お互い。
などと言って、クスクス笑う。

「女ですもの。姉さまもきっと川島さまが手を伸ばしたら、迷わずその手を取られるでしょう。たとえどんな知れ切った困難であろうとも、川島さまと生きていこうと思うはずです。女って、そういうものですよね」
「……そったな恐とろしいこと言わんで、かえちゃん。アンタが知れ切った往生を遂げるつもりなら、わっちも命に代えてそれをとめなあかんえ」

瑞樹天神は凍り付くように血の気の引いてくる顔を、必死に取り乱さぬよう保った。
太夫の表情は、何かを覚悟した顔に見えてならなかったのだ。

「安心して、姉さま。足抜けだとか心中とか、物騒なことは考えておりません。わっちは……あの人とは、一緒には生きられません。それは、わかっておりますから」

それは、天神にとって意外な答えであった。
が、続きに、もっと予想外な言葉が続いた。

「わっちは、誰のお身請けも、お受けいたしませぬ」

なんして、と、問う前に、太夫は続けた。

「わっちは、きっとあの人を忘れることは出来んせん。身請けの果報を頂きながら他の殿方を想い続けることは、不義理でありんす。けんど、あん人はわっちと生きるべきでは、ねのす」

普段は口にせぬ、お里のなまりが、端々に交じり始めた。



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