高垣楓「君の名は!」P「はい?」
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63: ◆PL.V193blo[sage]
2018/04/20(金) 21:10:06.92 ID:NMaauvKO0
――――いっそ、和歌山にこのまま引きこもっちゃいますか。
アイドルも辞めて。プロデューサーも辞めて。ただのふたりで、いっしょに。

「幸い、お金はおっかねえくらいありますし。」

ふと、彼女の駄洒落は、いったい誰の影響なんだろう、と思った。
この互い違いの綺麗な瞳が笑っていると、ずっと見つめていてほしくなる。

「……人間なんて案外、いい加減なもんです。今が良くなれば過去の意味なんて変わります」

だからこそ僕は、楓さんにそんなことを言わせたくはなかった。

「あなたの周りには、たくさんの素晴らしい人たちがいます。瑞樹さんも、美優さんも、志乃さんも。心配しなくても、ここから先は良いこと尽くめですよ」

新しいミネラルウォーターのキャップを親指で開けると、パキッと音がした。

「もちろん、僕だって居ます。もう二度と、寂しい思いはさせません」

水の冷たさで渇いてきた喉を潤す。楓さんが、不安そうな顔をしていたような気がしたから。
ひょっとしたら――楓さんにとって故郷は、楽しい思い出ばかりの場所ではなかったのかもしれない。

『この瞳は、気持ち悪くないですか』

昔、たった一度だけ、二人きりの車の中で、ぽつりとつぶやかれたことがある。
僕は、なんのことかわからず、ぽかんとしてしまった。

『別に……? いつも通り綺麗ですが』

要領を得ないまま、そう答えてしまって、あの時は貴女の事を、僕と同じようなぽかんとした顔にさせてしまったけれど。
貴女は、辛いときは、得意の駄洒落を飛ばして、へっちゃらだって笑い飛ばしたんだろうか。
それとも、僕たちに出逢うまで、駄洒落を聞かせる相手も居なかったのだろうか。



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