小日向美穂「神様にはセンチメンタルなんて感情はない」
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21:名無しNIPPER[saga]
2018/04/24(火) 22:36:28.77 ID:WQSNhX7B0
それからしばらくのあいだ楽屋では2人ぶんのひーひー言い合う声がひびいた。

私はとびきりすっぱいキャンディをなんとか口の中に押し込みながら言い訳をした。

「あのね、ちがうの、ほら私って緊張しいでしょ? だからリハの前にはいつもこれ食べて落ち着かせてるの、ねえ本当だってば」

「なんでわざわざこんなハズレがあるお菓子!」

「リハの前にハズレを食べちゃったらどうしようって緊張するでしょ? だから緊張を緊張で上書きしようっていう、そういう運試し?ジンクス?みたいな」

我ながら意味の分からない理由だけど、でも本当のこと。
卯月ちゃんは目をすっぱくさせながら納得したような納得してないような微妙な角度でうなずいた。

「あはは……でも確かに緊張はやわらいだかも」

ほとんど涙目になりながら卯月ちゃんは言った。
私にとってそれはもはや慰めに近い言葉だった。
だって、まさか2人して同時に爆弾を引き当てるなんて思わなかったし、こんなときに善意が裏目に出るなんて。

実際、私たちはあと少しで歌番組のリハーサルが始まるところで、少なからず緊張していたのだった。

べつに初めての番組出演というわけでもないし、私たちもユニットを組んでそれなりに日は経っていたからそろそろ慣れてもいいはずなのに、特に私なんかはリハーサルでさえ手が震えちゃうくらいのあがり症をまだ克服できずにいた。

「それにしても爆弾2つ入りの袋だったなんて、運がいいんだか悪いんだか」

「もしかして不良品なんじゃないですか?」

「ううん、これはそういうのがあるんだよ。ほら、むかしあったじゃない、スナック菓子の袋に超低確率でヘンな形のが入ってるっていう……」

卯月ちゃんはそれは知っていたみたいで、「ああ!」って懐かしそうに言った。
もうあのお菓子はだいぶ前に生産中止になっちゃったけどね。


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