2: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2018/04/26(木) 20:00:57.24 ID:zmYsrQkn0
窓の外はすぐに海。全開にしているものの、目視できる木のそよぎほどには風が入ってくるように感じられなかった。首を振る扇風機も、こう室温が生ぬるくては、気休めにしかならない。
消波ブロックの上では麦藁帽を被った人物がのんびり釣竿から糸を垂らしている。顔はひさしに隠れて見えないが、シャツの背に「瑞雲」と書かれているので誰何は容易だ。
「……散歩にでも行くか」
部屋の中に籠っているよりかは、そちらのほうがいくぶんか健康的に思えた。
サンダルをつっかけ開襟をいつもよりボタン一つ分外す。帽子は目深にかぶって、冷蔵庫からミネラルウォーターを確保。
「ふぅ」
玄関の庇しが作る陰から一歩踏み出そうものなら、太陽が熱く俺を歓迎してくれる。そんなものはいらない。たまにはお前にだって休みをくれてやるというのに、強情を張るんじゃない。
悪態を内心でつきながら、陽炎の中に身を投じた。アスファルトは輻射熱が地獄のようだ。それでも海沿いに建っている我が鎮首府は、遮るものがなければ最高の海風を届けてくれる。
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