【ミリオン】君がいる愛しい世界
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16: ◆nmcoT1iylg[saga]
2018/04/26(木) 23:54:40.72 ID:f2WBlHUh0
 大和撫子になりきれない。新曲は大和撫子だけが歌えるようなものなのに。今の私がこんな風ではこの曲を壊してしまう。
 こわい、こわい。どうしようもなくこわい。
 そして泣いてしまった。

 視界がじんわり滲んで、撫子の花にひとつ。雫を落とした。一度こぼれてしまうともう我慢できなくて、ふたつみっつととめどなくあふれてくる。涙が触れるたびに撫子の花は揺れ動いた。
 するとその隣も、そのまた隣にも雫が落ちる。
 ふと上を見上げるとさっきまで光を降り注いでいた太陽はすっかり分厚い雲に覆われていた。
 雨だ。

「うわ、夕立かな。風邪引くといけないから……、あそこの藤棚に行こう」

 そう言って仕掛け人さまは私の手を引いた。引かれるがまま花畑から少し離れた小高い丘の一番上にある藤棚に向かう。ちょっとした休憩所みたいになっていて、木の椅子が一つ置かれていた。藤の花は七分咲きといったところ。


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