104:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 19:41:54.39 ID:A6rjc17z0
 「……弊社が、ですか?」 
  話の意図が分からず、キョトンとした顔をするしかない私に、その男の人は手を振りました。 
  
 「だからさぁー! 分かんない? 
  身の程を弁えた方が、って話ですよ。オタクも子供じゃないんだからそれくらい察してほしいけどなぁ。 
105:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 19:45:21.89 ID:A6rjc17z0
 「はぁぁぁ!? 何そいつ、やっぱ俺も行った方が良かったな」 
  
  レッスンが終わった後、ほたるちゃんと一緒に事務所に戻り、その事を話すと、プロデューサーさんは分かりやすく憤慨しました。 
  
 「俺だったらそんな野郎、ボッコボコのケチョンケチョンのパーにしてやったのによ」 
106:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 19:48:19.13 ID:A6rjc17z0
 「彼の言う通りだ」 
  事務員さんがゲロちゃんを差し出して、プロデューサーさんが百円を入れました。 
  
 「我々が考える事は一つ。 
  白菊君のステージを成功させる事だけだ。結果なんて後からついてくる」 
107:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 19:50:56.38 ID:A6rjc17z0
 「ほたるちゃん」 
  
  すっかりハの字になった眉で、今にも泣き出しそうな顔をほたるちゃんは私に向けます。 
 「美優さん……」 
  
108:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 19:53:50.97 ID:A6rjc17z0
 「…………はい」 
  
  ほたるちゃんは、弱々しく頷きました。 
  観念したような――前向きな返答のはずなのに、何かを諦めたかのようでもありました。 
  
109:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 19:57:22.23 ID:A6rjc17z0
  フェス当日まで、あと三週間を切りました。 
  
  トレーナーさんの指導にも熱が入ります。 
  
  
110:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 19:59:37.98 ID:A6rjc17z0
  塞ぎ込みがちになってしまったほたるちゃんのため、私とプロデューサーさんはある決断をします。 
  
  それは、苛烈な猛特訓をほたるちゃんに課し、悩む隙を与えないというものでした。 
  
 「いささか酷だが、多少の荒療治をしないと、今のほたるちゃんの思考はそう簡単に改善しないと思う。 
111:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 20:01:20.84 ID:A6rjc17z0
  ふと、トレーナーさんと目が合いました。 
  彼女は、真剣な眼差しを私に真っ直ぐ向け、黙って頷いています。 
  
  やがて、それをほたるちゃんに戻しました。 
  
112:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 20:03:56.67 ID:A6rjc17z0
  このシチュエーションで、あんな事を聞かれて、否定できるはずがありません。 
  
  逃げ道を、自らの手で断つように仕向けて、追い詰めるなんて――。 
  
  まるで、軍隊か何かのような、思想の強制――洗脳と言っても良い仕打ちです。 
113:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 20:06:46.70 ID:A6rjc17z0
  このままではいけません。 
  
 「プロデューサーさん。三日後の午前中に、ほたるちゃんの地元の町内会でイベントが予定されています。 
  これに参加して、本番に向けたPRをしてこようと思うのですが、いかがでしょう?」 
  
114:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 20:11:15.33 ID:A6rjc17z0
 「理由は二つある」 
  プロデューサーさんは、腰を上げました。 
  
 「まず、距離が遠い。ほたるちゃんの地元は鳥取だったな。 
  新幹線か飛行機で行くにしろ、彼女の経歴を考えると、何かしらのアクシデントに巻き込まれないとも限らない」 
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