110:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 19:59:37.98 ID:A6rjc17z0
  塞ぎ込みがちになってしまったほたるちゃんのため、私とプロデューサーさんはある決断をします。 
  
  それは、苛烈な猛特訓をほたるちゃんに課し、悩む隙を与えないというものでした。 
  
 「いささか酷だが、多少の荒療治をしないと、今のほたるちゃんの思考はそう簡単に改善しないと思う。 
111:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 20:01:20.84 ID:A6rjc17z0
  ふと、トレーナーさんと目が合いました。 
  彼女は、真剣な眼差しを私に真っ直ぐ向け、黙って頷いています。 
  
  やがて、それをほたるちゃんに戻しました。 
  
112:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 20:03:56.67 ID:A6rjc17z0
  このシチュエーションで、あんな事を聞かれて、否定できるはずがありません。 
  
  逃げ道を、自らの手で断つように仕向けて、追い詰めるなんて――。 
  
  まるで、軍隊か何かのような、思想の強制――洗脳と言っても良い仕打ちです。 
113:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 20:06:46.70 ID:A6rjc17z0
  このままではいけません。 
  
 「プロデューサーさん。三日後の午前中に、ほたるちゃんの地元の町内会でイベントが予定されています。 
  これに参加して、本番に向けたPRをしてこようと思うのですが、いかがでしょう?」 
  
114:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 20:11:15.33 ID:A6rjc17z0
 「理由は二つある」 
  プロデューサーさんは、腰を上げました。 
  
 「まず、距離が遠い。ほたるちゃんの地元は鳥取だったな。 
  新幹線か飛行機で行くにしろ、彼女の経歴を考えると、何かしらのアクシデントに巻き込まれないとも限らない」 
115:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 20:12:58.10 ID:A6rjc17z0
 「大丈夫だよ、美優さん。むしろ当日まで秘匿させてやろうぜ」 
  
  プロデューサーさんはコーヒーを啜って、ニッコリと笑いました。 
 「えっ?」 
  
116:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 20:15:46.11 ID:A6rjc17z0
 「……はい」 
  
  私は、この事務所の――ほたるちゃんの力に、なれないままです。 
  
  肩を落として、自分のデスクに着きました。 
117:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 20:18:59.77 ID:A6rjc17z0
  いつぞやいただいた大量のアイスが、順調に消化され、いつの間にか底をついてきました。 
  
  真夏の暑さがいよいよピークを迎え、フェスの本番も三日後に迫っています。 
  
  
118:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 20:22:17.27 ID:A6rjc17z0
 「お、おい。ひょっとして空調壊れてないか?」 
 「えっ?」 
  
  
  途中から、妙に暑いと思っていました。 
119:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 20:24:58.67 ID:A6rjc17z0
 「アタシの責任です」 
  
  スタジオの管理室で、トレーナーさんが頭を下げました。 
  普段の明るい彼女からは想像できない、悔しさに満ちた苦悶の表情です。 
  
120:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 20:27:14.97 ID:A6rjc17z0
 「私のせいじゃないのなら」 
  
  プロデューサーさんに、私は向き直りました。 
 「一体私は、何のためにいるのでしょうか」 
  
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