144:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 23:10:28.87 ID:A6rjc17z0
 「主役……」 
  
  ふと、隣に立つほたるちゃんを見ました。 
  
  
145:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 23:13:14.09 ID:A6rjc17z0
  私の通っていた地元の高校は、田舎であった分、敷地も校庭もすごく広いものでした。 
  100m走のレーンを斜めではなく真横に引いて、なお十分な余裕があったほどです。 
  
  眼下に広がる一面の広場は、記憶にあるその校庭の、優に倍の広さはあるでしょうか。 
  
146:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 23:17:04.54 ID:A6rjc17z0
 「そこの、今ちょっとデブな人が降りてった、向かって右側の階段からかな?」 
  
  プロデューサーさんが、手元の資料を見ながら指を差しました。 
 「で、終わって捌ける方も同じ。待機場所の舞台袖もそこだから、迷う事は無いと思う」 
  
147:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 23:19:51.30 ID:A6rjc17z0
  事務員さんが指を差す先には、資料を片手にスタッフさん達と忙しそうに言葉を交わしている、帽子姿の男性がいました。 
 「はい」 
  
 「それと、例のモノは、いつ渡すんだい?」 
  
148:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 23:22:31.29 ID:A6rjc17z0
  責任者さんにご挨拶と、今日の進行を再度確認しました。 
  雨が降る予定だったので、急遽テントを増設して、待機場所を変更したのだそうです。 
  
  それから、音声のスタッフさんに今日の音源を渡して――。 
  えぇと、確かこの辺に――。 
149:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 23:25:48.76 ID:A6rjc17z0
 「なぁ、知ってます? 今日台風が来るんだってよ、台風。 
  ちょうどフェスが始まる頃に首都圏上陸ってな」 
  
  ハハハ、と無遠慮に笑い飛ばしながら、その場に立ち尽くす私の横をゆっくりと通り過ぎていきます。 
  
150:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 23:27:55.00 ID:A6rjc17z0
 「いい加減にしてください」 
  
  とうとう、我慢できなくなってしまいました。 
  気づかぬ内に、拳を握りしめています。 
  
151:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 23:31:03.88 ID:A6rjc17z0
 「あんたは?」 
 「失礼……申し遅れました」 
  
  胸元から名刺入れを取り出し、一枚引き出しました。 
 「こういう者です。本日は、私がプロデュースするアイドルも出場致します」 
152:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 23:33:11.57 ID:A6rjc17z0
 「……すみません、ありがとうございました」 
  
  改めて、私は頭を下げました。 
  まさか、346プロの方が私を――いいえ、ほたるちゃんをかばってくださるなんて。 
  
153:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 23:42:57.88 ID:A6rjc17z0
 「お互い、頑張りましょう。では、失礼致します」 
  
  最後にもう一度、軽くお辞儀をして、その人はステージの方に歩いて行きました。 
  
  
154:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 23:45:30.76 ID:A6rjc17z0
 「ほたるちゃん……」 
  
  今日の――いいえ、会場に着いてからのほたるちゃんは、まるで別人のようです。 
  いつもはハの字になっている細い眉をキュッとさせて、口を固く結び、何よりもその目。 
  
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