151:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 23:31:03.88 ID:A6rjc17z0
 「あんたは?」 
 「失礼……申し遅れました」 
  
  胸元から名刺入れを取り出し、一枚引き出しました。 
 「こういう者です。本日は、私がプロデュースするアイドルも出場致します」 
152:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 23:33:11.57 ID:A6rjc17z0
 「……すみません、ありがとうございました」 
  
  改めて、私は頭を下げました。 
  まさか、346プロの方が私を――いいえ、ほたるちゃんをかばってくださるなんて。 
  
153:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 23:42:57.88 ID:A6rjc17z0
 「お互い、頑張りましょう。では、失礼致します」 
  
  最後にもう一度、軽くお辞儀をして、その人はステージの方に歩いて行きました。 
  
  
154:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 23:45:30.76 ID:A6rjc17z0
 「ほたるちゃん……」 
  
  今日の――いいえ、会場に着いてからのほたるちゃんは、まるで別人のようです。 
  いつもはハの字になっている細い眉をキュッとさせて、口を固く結び、何よりもその目。 
  
155:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 23:48:52.19 ID:A6rjc17z0
  気づくと、空は真っ黒な雲に覆われ、時折遠くでゴロゴロと音が聞こえます。 
  プロデューサーさんが、ほたるちゃんを出演者用のテントへ案内しました。 
  
  皆さんの後ろを歩きながら、おもむろに私はバッグを漁ります。 
  そろそろ――。 
156:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 23:52:02.71 ID:A6rjc17z0
  可能性として考えられるシーンは、ただ一つ。 
  
  少し前、スタッフさんに渡す音源のCDを出そうとバッグを漁りながら――。 
  
    ――キャッ!? うわ、す、すみま… 
157:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 23:55:01.29 ID:A6rjc17z0
  遠くの前方を歩く、三人組の女の子達のグループ――。 
  その一人の手元に、私は目を見張りました。 
  
  チラリと見える、見覚えのある小包――。 
  
158:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 23:58:48.51 ID:A6rjc17z0
 「はぁ、はぁ……!」 
  
  まだ遠くには行っていないはずです。 
  交差点に立ち、私は辺りを見回しました。 
  
159:名無しNIPPER[saga]
2018/04/30(月) 00:01:29.52 ID:LS54PsoZ0
  お話が好きなのか、優しげに、しかしとてもゆっくりとお婆さんは笑いながら私に話しかけます。 
  見ると、あの子達の姿がどんどん小さくなっていました。 
  
  お婆さんには失礼ですが――こんな時に、次から次へ――! 
  
160:名無しNIPPER[saga]
2018/04/30(月) 00:03:52.69 ID:LS54PsoZ0
 「ありがとうねえ、本当に助かったわぁ」 
 「後は、ここで並んで、順番がきたら先ほどの引換券を見せれば、大丈夫だと思います」 
  
  何度もお礼を言ってくれるお婆さんに会釈をして、私は一息つくと、再度走り出しました。 
  
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