47:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 16:57:14.71 ID:A6rjc17z0
  エスカレーターでゆっくりと上がって、上階の雑貨屋さんを目指します。 
  
  エレベーターは、前に止まってしまった事があって以来、なるべく使わないそうです。 
  
  ――――。 
48:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 16:58:29.56 ID:A6rjc17z0
 「可愛いですよね、ウサギ」 
  
  そう言いながら、なんて健気で儚いのだろうと思いました。 
  
  彼女は幸せを願っている――つまり、自身の不幸な現状を、憂いているのです。 
49:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 17:03:29.30 ID:A6rjc17z0
 「あ、そういえば」 
  手にとってしばらく眺めた後、何かを思い出したように、嬉しそうな顔を私に向けました。 
  
 「知っていますか? テントウムシって、一番てっぺんまで登ってから飛ぶんです」 
  
50:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 17:05:09.40 ID:A6rjc17z0
 「白菊さんなら、きっとなれると思います」 
  
  ちゃんと上まで、登っていける――いえ、彼女には、登っていってほしいと思います。 
  
 「ありがとうございます。それと、あの……今さらですが」 
51:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 17:07:18.76 ID:A6rjc17z0
  呼んでみると、彼女の顔が、パァッと明るくなりました。 
 「は、はいっ」 
  
 「ほたるちゃん、で良いですか?」 
 「はいっ! あ、あの……私も、美優さんって、呼んでいいですか?」 
52:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 17:11:03.59 ID:A6rjc17z0
  ほたるちゃんにせがまれて、今度は私の用で、アロマのお店に行きました。 
  
  と言っても、実は、そこまで入り用があった訳では無いのですが――。 
  せっかくですし、何か買おうかしら。 
  
53:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 17:15:02.50 ID:A6rjc17z0
 「それじゃあ、私にも合うかも知れません」 
  
  そう言って、ほたるちゃんは、スティック状のアロマグッズを手に取りました。 
 「私なんて、上手く行かない事ばかりですから」 
  
54:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 17:17:07.41 ID:A6rjc17z0
 「す、すみません……」 
 「謝ることでは、ないですよ」 
  
  笑いかけながら、彼女のアロマを手渡すと、ほたるちゃんはなおも恐縮そうに身を縮めました。 
  
55:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 17:19:13.08 ID:A6rjc17z0
 「とてもお似合いですよ! 新しく売り出したこちらのアウターが、当店では人気なんですっ。 
  軽くて着心地良い上に風も通さないので、そう季節を選ばずに着れますよ?」 
  
  そ、そうかしら――ほたるちゃんにも、お似合いですし――。 
  
56:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 17:23:41.26 ID:A6rjc17z0
  最上階にあるレストランフロアの、カフェに立ち寄ります。 
  
  ようやく腰を落ち着けて――ふと窓の外を見ると、まだ雨が降り続いているようです。 
  
  
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