2:名無しNIPPER[saga]
2018/05/04(金) 20:58:26.23 ID:AZDT1Nlu0
  
  「……もう少し、気を緩めてもいいと思うのですが」 
  
  「まぁ、何人かはこういう役も必要だ。昔から慣れてる」 
  
 遠巻きにこちらを眺めていた皆様を一瞥する。 
 目を合わせようとして、合わなかった。 
  
 いや、大半は善良なファンの方だというのは重々承知してはいる。 
 ただその中に妙な輩が紛れ込んでいる可能性を考えなきゃならないだけだ。 
 内心じゃあ平謝りだ。 
  
  「それにしても、こんな端っこで……少しは輪に加わったって」 
  
  「気にしなくていい。肇こそ楽しんでこい、折角の花見なんだ」 
  
 正確な言葉でどう言うのかは知らないが、盛りは少し過ぎてしまったらしい。 
  
 幹に背を預け、仰ぎ見る。 
 春風に揺られる度、何枚もの花びらが舞い落ちてくる。 
 一つがジンジャーエールに浮いて、小さな波紋を立てた。 
  
  「……」 
  
 肇が少しだけ逡巡し、それからゆっくりと腰を上げた。 
 そして輪の中心部へ歩み寄っていく。 
 細い背中を見送りながら紙コップを空にしてやった。 
  
 自分の顔面を好ましく思ったことなど一度だってない。 
 だが、この面がたまには役立つと言うなら……まぁ、悪くない。 
  
  
 さて、『番犬』の続きと洒落込もう。 
  
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