白菊ほたる『災いの子』
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6: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/05/04(金) 23:13:40.48 ID:GasL4mJG0
 ある日、『アイドル』というものを見た。
 それはテレビの音楽番組で、若い女の人がフリルいっぱいのひらひらしたドレスに身を包んでいた。

 彼女は希望の歌を歌っていた。
 信じればいつか夢は叶うというような、陳腐でありふれた歌詞。だけどそれは、これまでに聴いたどんな歌よりも私の心に響き、深く深く刻みつけられた。
以下略 AAS



7: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/05/04(金) 23:16:04.73 ID:GasL4mJG0
 家族にも内緒で小さな芸能プロダクションのオーディションを受け、数日後に合格の連絡が届いた。それから三日三晩かけて必死に両親を説得し、知り合いのひとりもいない東京で生活を始めた。
 これで私もアイドルだと、胸をときめかせて。
 だけど現実はそんな甘いものじゃなかった。故郷を離れても、芸能事務所に所属しても、私の不幸は止むことはなかった。

 最初に所属したプロダクションはたびたび空き巣被害にあい、事務所が火災で半焼して、最後は従業員がお金を持ち逃げして倒産した。
以下略 AAS



8: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/05/04(金) 23:17:10.80 ID:GasL4mJG0
 夜、眠るたびに夢を見た。かつて所属していた事務所の社長や、同僚のアイドルや、プロデューサーさんたちが私を指差して「お前のせいだ」と責めたてる夢だ。夢の中の私は、ひたすらに頭を下げて「ごめんなさいごめんなさい」と繰り返していた。

『お前のせいだ、お前さえいなければ』

 ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
以下略 AAS



9: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/05/04(金) 23:19:02.70 ID:GasL4mJG0
   *

 ひどく喉が渇いていた。

 辺りを見回し、すぐ目の前の公園に飲み物の自動販売機があるのを見つける。
以下略 AAS



10: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/05/04(金) 23:21:36.15 ID:GasL4mJG0
「どうしたの?」

 ふいに背後から声がかかる。あわてて目元をぬぐい振り返ると、すぐそばにスーツ姿の男の人がいた。
 周囲に他に人の姿はない。さっきの言葉は、私に向けて言ったようだ。

以下略 AAS



11: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/05/04(金) 23:22:42.83 ID:GasL4mJG0
「今回のプロダクションでは、お仕事をもらえて……。売れっ子さんのバーターでの出演でしたけど、それでもいけるかなって思ってたんですけど……やっぱりダメで」

「今日の、現場に来なかったって子かな」

 こくりとうなずきを返す。
以下略 AAS



12: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/05/04(金) 23:23:44.97 ID:GasL4mJG0
 ――あなたさえいなければ。



 伸ばしかけた腕がこわばる。
以下略 AAS



13:名無しNIPPER[sage]
2018/05/05(土) 07:41:29.73 ID:5oRT5R0SO
シンデルヤン


14: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/05/05(土) 11:10:05.29 ID:sqRoe9hI0
   02.

 あたしはかなりの夜型なもんで、たいていの場合、かなりの深夜になってから床につく。
 昨夜は特に、次の日(つまり今日)が久々のオフだと知っていたこともあって、なんの遠慮もなく夜更かしして、ベッドに潜り込んだころにはもう空が明るみ始めていた。

以下略 AAS



15: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/05/05(土) 11:11:39.14 ID:sqRoe9hI0
 ちひろさんからの依頼は、新人アイドルが寮に入るから案内してやってほしい、とのことだった。
 平日のまっ昼間ということもあり、学生たちはみんな学校に行っている。そうでない人らは仕事やらレッスンやらに出ていて、ちょうど手の空いているのがあたしぐらいしかいなかったそうだ。

 特に用事があるわけでもなかったので、あたしはそれを承諾した。
 新人さんがどんな子かというのにも興味があったし、寮に入るのならなにかと顔を合わせる機会も多いだろう、他の誰よりも早く顔見知りになれるというのに、ちょっとした優越感を感じたりもする。
以下略 AAS



16: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/05/05(土) 11:12:32.82 ID:sqRoe9hI0
 ちひろさんとの通話を終え、あたしは手早くシャワーを浴びてから1階ロビーに降りた。
 長椅子に寝そべり、共同スペースから持ってきた雑誌を眺めながらしばし待つ。ほどなくして、入り口の自動ドアの向こうにひと組の男女が連れ立って歩いてくるのが見えた。
 少し後ろを歩いている少女が新人さんだろう。聞いた年齢よりはいくらか大人びて見える。
 男のほうは、あまり話をしたことはないけど見覚えのあるプロデューサーだ。あの人が新人さんの担当になったのかな。……って、なんだあれ?

以下略 AAS



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