5:名無しNIPPER
2018/05/12(土) 21:46:55.12 ID:RrOmRxVI0
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「んーつまりねー、この桃色はニセモノかもってこと!」
「ニセモノー?」
ありすちゃんの隣で一緒に見入っていた薫ちゃんも志希さんの顔を見上げます。
「ちょっと待っててね〜」
そう言い残すと志希さんは、庭の端にある散水栓へふらふらと歩いて行きました。いつの間にやら用意した短めのゴムホースと比色管を手にしたその後ろ姿に、不思議そうに、それでいて興味津々といった子供たちの眼差しが注がれます。
地面に湧き上がるように広がった水溜りでヒョウ君と戯れていた小春ちゃんも、業者さんに工事の依頼の電話をするプロデューサーさんも、ありすちゃんに付き添って一緒にこの不思議な桃色を観察していた私も、今この瞬間は全員が、猫のように自由でそれでいて自信と幸福に満ちたその足取りの行く末に惹きつけられていたのでした。
このような機会はなかなかないので、私も実はとても興味深かったりするのです。
大学では普段全く触れることのない分野のお話で、かつ、志希さんと偶に交換する書物でお目にかかってもなかなか実演とまではいかないので、ありすちゃんとほぼ同じくらいの目線でこの不思議な色彩のステージを眺めているのですが、そのことは本人には秘密です。
ありすちゃんとは普段から仲良くさせてもらっています。
私よりもずっと歳下でまだまだ小さなその姿からは予想もつかぬ程に、その内側には私などとは比べられぬ程の勇気と向上心に満ちています。実際にお仕事の中で助けられる場面も多々ありまして、私はそんなありすちゃんに尊敬の念を抱いているのです。
それでもありすちゃんは私のことを慕ってくれています。
おすすめの書物を紹介し合ったり、ありすちゃんの学校の宿題をお手伝いしたりする時に見せるそのきらきらとした瞳は、私には少しばかり眩しく映るのですが、同時に嬉しくも思います。
とても博識だとか、知的で大人っぽいなどとお褒め頂く際にも変わらぬ眼差しに、恥ずかしさで体がむず痒くなることもありますが、あまりお話も得意でない私に対して御世辞の混ざらぬ純粋な言葉と期待とを向けてくれることが最近では誇らしく、少しでも期待に添えるような立派な大人の女性にならねばと思えてくるのです。
しかし今回の実験も、この桃色で水道水か否かと判別しているというところまでは理解できましたが、そこから先はさっぱりわかりません。
専門分野外と言えばそれまでですが、何をする気なのでしょうかとありすちゃんから問いかけられても、わかりませんとしか答えられないであろうことが、少しもどかしいという気持ちがあります。
今度そういった本も読んでみるのもいいかもしれません。
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