渋谷凛「ふーん、アンタが私のプロデューサー?」
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23:名無しNIPPER[saga]
2018/06/08(金) 02:22:04.00 ID:eWOyioU/O
ある雨の日、俺はシガーバーにいた。凛のプロデューサーをやめてから、だいぶ後だ。

そのシガーバーには通い慣れていたし、在学中に資格試験に通らなかった俺は大学院に行くことになっていたから就職活動なんかもなくて、そのときの俺はとにかく壁際でだらけていたはずだ。油断していたんだ。

「いや。もし凛が俺のことを覚えていてくれるなら、それだけで俺は嬉しい」

俺が別れ際にそういうと、凛は目に涙を溜めながらもう一度頷いてくれた。俺のことを抱き締めていてくれたはずの彼女の腕からは力が抜けて、ほとんどずり落ちていた。

「凛、って呼んで」

彼女は俯いてそう言った。
断る理由はなかったから、俺は

「分かった」

と答えた。それから、なるべく感情を溢れさせないように気をつけながら

「じゃあな、凛」

なんて格好つけた別れの台詞を吐いた。
凛が俺にしがみつく腕にまた少し力が入って、そのまま彼女は

「約束、破るね」

とだけ言った。そう言ったきり何も喋らなくなり、肩を震わせて泣きじゃくった。
たった一年過ごしただけでこんなに泣いてくれる。俺はそのことだけでその時まで感じたことのない不思議な充足感を覚えていた。

「凛は、約束、守るタイプだと思ってたんだけどな」

「何でそう思ったの?」

「勘」

「なら勘違いだったね」

20分もしないうちに凛は涙を拭い終えて、無理か笑顔を見せてくれた。

「プロデューサーは?」

「ん?」

「約束、守れる人?」

「…どうだろうな。どんな約束でも、守りたいとは思うけど」


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