13: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/04(水) 12:29:05.35 ID:5DTrxNrT0
彼女には、そんな残酷なことはできなかった。
すぐに無能の烙印を押され、簡単な事務作業や雑用を押し付けられるようになった。
あの日。
あの日は、オーディション会場の外で誘導をまかされていた。
会場にやってくる少女たちをドキドキしながら案内して、会場を去る少女たちには涙を添えた。
オーディションが終わる、午後3時ころ。
彼女は会場の周囲をぐるぐる回ってゴミ拾いをしていた。
こういう誰の迷惑にもならない作業に、彼女は心から安らぎを覚えた。
やはり自分には芸能関係は向いていないのだと思った。
仕事はもう辞めよう。
実家に帰り花嫁修業でもして、だれか理解のあるひとと結婚しよう。
そんな風に考えていたとき、薄汚れた格好の少女が倒れているのを見つけた。
オーディションで玉砕したのかな。
彼女がそう思って近づくと、その少女は顔を上げた。
洋服と同じように顔をすこし汚れていた。
だが、その瞳は強靭な意志を湛えていた……と女は思う。
「アタシをアイドルにしろ」
そう言われたとき、自分の生きる道が決まったと思った。
少女は「小関麗奈」と名乗った。
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