285: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2018/07/20(金) 23:55:08.19 ID:LvNYVq+e0
ふいに、ぽろろん、と、どこからともなくカンテラの音が聞こえた。
「ん、んん?」
姿が見えずともわかる。
カンテラなんて弾く人間、俺たちの身内では一人しかいない。
「ぉおおっ!? ミカ、帰ってきたのか!」
「甘い香りに誘われてね」
バーの入り口から現れたミカは、アンチョビを挟んで俺の二つ隣に座ると、マスターへオレンジジュースを注文した。
下戸なのだ、この人は。
ミカはジュースを一口飲むと、ふうと息を吐き、再び、ぽろろろーんとカンテラを弾いた。
「アンチョビ。朝が来る前に勝利を収められて良かったね」
ミカの言葉に、アンチョビは「どういう意味だ!」と抗議の声を上げる。
俺はどういう意味かがわかってしまって、気恥ずかしさを誤魔化すべく「パンツァーフォーっ!」と叫んだ。
マスターが俺と一緒に右手を突き上げてくれたのが、俺には大層嬉しかった。
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