10: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 07:40:14.20 ID:+QmI8LWq0
 「だきしめても、いいですかぁ」 
  
 その言葉を言い終えるまえに、まゆは相手を抱き締めていた。 
 罪の香りがする。鼻先を、薄灰色のジャケットに押し付ける。 
 鼻梁がひくひくと震える。鼓動がおちつく。なにも聞こえない。 
  
 プロデューサーさんだ。 
  
 おでこを、白い糊のきいたシャツにこすりつける。 
 プロデューサーの男は抱きしめ返すでもなく、頭を撫でるでもなく、腕時計の秒針の動きを見ていた。 
 エレベーターが5階に到着し、視界が開ける。 
 まゆは彼の腕にしなだれかかるようにして、名残惜しそうに個室から歩みだした。 
  
57Res/32.98 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 
書[5]
板[3] 1-[1] l20