16: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 07:46:53.95 ID:+QmI8LWq0
 恋、かぁ。 
  
 トレーナーは嘆息した。 
 彼は、様々な女性達から思いを寄せられている。あるひとりを除いたアイドル、事務員、役員……トレーナー達からも。 
 彼自身はそれに驕ることはない。むしろ、自分に向けられる好意を巧妙に利用している。 
17: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 07:47:59.58 ID:+QmI8LWq0
  
 「どうです、かぁ?」 
  
 まゆは一旦ステップを止めて、トレーナーに尋ねた。 
 肩で息をして、汗がおでこから目元、あごから首筋につぅと流れていく。 
18: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 07:48:32.54 ID:+QmI8LWq0
  
 「身体をこわしちゃうと、プロデューサーさんが悲しみますよ」 
  
 「プロデューサーさんが……」 
  
19: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 07:49:17.40 ID:+QmI8LWq0
 ・・・ 
  
 モデル時代の貯金もあり、佐久間まゆのデビューは成功を収めた。 
 甘い容姿と声で男子のファンが付き、女子のファンは過去の雑誌購買層から。 
  
20: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 07:49:48.52 ID:+QmI8LWq0
 ・・・・ 
  
 もっと知らなくちゃ。 
  
 まゆは、プロデューサーが住む家の前に来ていた。 
21: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 07:50:33.85 ID:+QmI8LWq0
  
 家に入る前に、ある程度の間取りはつかんでいる。 
 一階玄関に上がって、正面のドア。リビング。正解。 
 まゆは慌てて、ニット帽と使い捨てのビニール手袋を身につけた。 
  
22: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 07:51:10.62 ID:+QmI8LWq0
 まゆはため息をついて、冷蔵庫から離れた。 
 嗜好がまったくつかめない。 
 せいぜい分かったのは、プロデューサーが自己管理を徹底していること。 
 もしかすると、他人から弁当やお菓子の類は受け取らないかもしれない。 
  
23: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 07:51:45.00 ID:+QmI8LWq0
 二階。扉は4つ。 
 そのうちの1つは、隣の扉と階段との間隔から2つ目のトイレ。 
 まゆは3つのうち、もっとも空間が広いであろう部屋に入った。 
  
 まず目に入ったのは、書棚。書棚が壁の代わりのように配置されている。 
24: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 07:52:21.59 ID:+QmI8LWq0
 隣の扉を開けると、そこは寝室だった。 
 ベッドがある。 
  
 だが、まゆはそこがすぐに寝室だとは思わなかった。 
 部屋のなかにはおびただしい量のプレゼントが置かれている。 
25: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 07:53:05.04 ID:+QmI8LWq0
 あとは……。 
 まゆは残りの部屋を開けた。予想は的中した。 
  
 衣装部屋。ドアの正面に姿見がある。 
 まゆは、プロデューサーの私服姿を想像し、いてもたってもいられなくなり、探索を開始した。 
26: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 07:54:13.17 ID:+QmI8LWq0
 まゆはニット帽ごしに、自分の頭を撫でつけた。 
 ここまで、プロデューサーの中身が明確にわかるものを、何1つ見つけられていない。 
  
 この家を訪れてからまだ1時間も経っていない。 
 だが不測の事態を考慮すれば、あとはもう一部屋が限界。 
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