照「わたしに妹はいない」久「……そう」
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187:名無しNIPPER[sage saga]
2018/09/02(日) 18:32:29.27 ID:rr1Aanow0
ここまでだ。私は二者択一を迫られ、失敗した。

点棒の受け渡しを終えてすぐ、自動卓がカシャリと音を立てて四角形の山を作る。南三局、和の言うところの「ちゃんとした麻雀」は寧ろここからのことなんだと思う。

宮永照の奇行、発言、四巡目での和了。これだけのものを見て、まだ自分の思惑通りに事が運んでいると思えるほど私はポジティブじゃない。私の持つカードは使い切った。点差は6900。ラス親はチャンピオン。勝つには残り二局、両方和了るくらいが求められる。四、五翻辺りの手でも逆転は可能だが、一度和了られるだけでその前提は崩れ去る。

南二局の六本場が終わったときが分水嶺だった。弘世さんが対局中にコンビ相手に話しかけたことを、私が容認したのはなにも善意からじゃない。あのときの弘世さんの点数は9600点、もし満貫払いを行った場合、優希が16700、和が36900、宮永照44800、そして弘世さんは1600点となる。和が安手で和了れなくなってしまうんだ。だから私はスルーを決め込むつもりだったが、悔やまれるのは優希がそのことに気付いてしまったことかしら。優希が弘世さんのミスを指摘したこと、弘世さんが満貫払いを申し出たこと、これらは私たち清澄と弘世さんの結託なんて行われていないことを示唆し得る。

弘世さんの満貫払いを受け、和の麻雀を縛ってしまうか。申し出を突っぱねて、そこに違和感を覚えられるリスクを高めるか。私は後者を選び、あるいはどちらを選んでも同じだったのかもしれないが、状況を悪化させてしまった。


「ツモ。1000、2000」

三巡目だった。三翻30符の和了。役満の手を呼び寄せるとか、相手の和了牌を握りこんで和了るとか、それらを体現するような優れた打ち手は数々いる。一つの局における闘牌を見たとき、理想とする打ち方は十人十色でも理想とする結果はおそらく万人共通だと思う。『自分が和了すること』、結局のところ目指すのはそこであり、それを体現する打ち手が彼女だから、彼女はチャンピオンと呼ばれるんだろう。宮永照の声が、私の頭の中でこだまする。


どこがダメだったんだろう。和にお願いして、東場の優希をアシストするべきだったのか。ダメ元で私が出ていればよかったかしら。ゆみに協力してもらっておいてこう言うのもなんだけど、そもそも麻雀で挑んだのが間違えだったのかもしれない。いっそのこと、白糸台生の前で大声で宮永姉妹の話をするのもよかったのか。もっと遡って、咲に傘を取りに行かせるとか、菓子で懐柔とか、そんなことせずに最初から突撃していれば上手くいったかもしれない。なにを思おうと今となっては結果論か。今の三翻30符により最後の局で逆転するために和は跳満を目指すこととなり、向こうはどんな和了でも良いこととなる。全力の和は強い、たぶん私よりも。それでもこの状況では……。
ああ……ああ。ここで信じる度量が私にあればよかったんだけど、和に、そしてゆみに悪いな。この後に及んで、まだこんな思い付きをするなんて。



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