37: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 01:15:47.34 ID:Ai+XpKnp0
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 
  
 高垣楓がステージの中心に立つ。 
 風が吹いている。瑞樹はそう思った。 
  
38: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 01:16:18.95 ID:Ai+XpKnp0
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 
  
 春の陽気がうっとうしくなりはじめる頃、瑞樹はひさしぶりにテレビ局に自主出頭した。 
 はじめから企画は瑞樹の裁量の埒外にあって、受け持っていた番組の後任もあらかじめ準備されていた。瑞樹は、着の身着のまま346プロダクションに送り出されたようなものだった。 
  
39: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 01:16:53.83 ID:Ai+XpKnp0
 いえ……“もう”半年、ね。 
  
 瑞樹は知っていた。現場から一旦遠ざかれば、それはもう局にとっては、他人なのだと。 
 アナウンサーでありながらも、部外者のように扱われる人間は、存在する。 
 瑞樹の同期にも、いた。 
40: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 01:17:24.19 ID:Ai+XpKnp0
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 
  
 「おつかれさま」 
  
 楽屋。 
41: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 01:18:03.50 ID:Ai+XpKnp0
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 
  
 夏のこもれびが枝葉の間をぬって、肌を焦がす頃。 
 LIVEのパフォーマンスも安定し、好意的な手紙がふえた。瑞樹は、その中の一通にあえて目を通さずに、毎日を過ごした。 
  
42: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 01:18:49.58 ID:Ai+XpKnp0
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 
 その夜。 
 瑞樹は、公衆電話のボックスの中で、ボタンを押した。コインを入れずに。 
 もう何度目だろうか。 
 携帯でかけて、出てもらえないのが怖かった。自分からかけるのも億劫だ。 
43: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 01:19:26.83 ID:Ai+XpKnp0
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 
  
 コンサート当日。 
 控え室には4人のアイドルがいた。 
  
44: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 01:20:16.07 ID:Ai+XpKnp0
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 
  
 コンサート会場は瑞樹のアイドルキャリア史上、最大規模だった。 
 座席数は17,000。主催者は後悔した。チケットは販売開始数時間で完売した。 
  
45: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 01:20:50.00 ID:Ai+XpKnp0
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 
 川島瑞樹の“最後の”コンサートが、日本中の話題をさらった。 
 皆が、コンサートを境に瑞樹がアイドルをやめると思っていた。 
  
 だが、実際瑞樹がやめたのは、アナウンサーのほうだった。 
46: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 01:22:11.87 ID:Ai+XpKnp0
 おしまい 
47:名無しNIPPER[sage]
2018/08/01(水) 01:27:41.95 ID:hM2aP92Ko
 乙 
 良かった 
54Res/76.55 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 
書[5]
板[3] 1-[1] l20