【バンドリ】無題
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1:名無しNIPPER[sage]
2019/01/16(水) 00:57:16.92 ID:M4jexkrI0

人が死ぬ話です


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2:名無しNIPPER
2019/01/16(水) 00:58:36.48 ID:M4jexkrI0

「俺が思うに生まれ変わりだとかなんだっていう迷信は救われなかった人とか報われなかった人とかが期待を込めて願うものだから、もしも宝くじが当たれば、ギャンブルで大勝ちすれば、なんていう風に一発逆転を本気で夢見るみたいな――」

 と、そんなことを友人らしき男性と話をしながら、宗教関係の本棚の前を歩く男性が目に付いた。

以下略 AAS



3:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/16(水) 00:59:19.72 ID:M4jexkrI0

「氷川さん」と、代わりに私を呼びかける声が響く。そちらへ視線を巡らせると、三十代半ばの男性……この書店の店長が、いつものように何も考えていないような顔で立っていた。

「はい。……ああ、もう上がりの時間ですか」

以下略 AAS



4:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/16(水) 00:59:59.48 ID:M4jexkrI0



 東北の中でも賑わう都市。その駅から歩いて十分弱の書店。そこが今の私……二十三歳の氷川紗夜が勤めている場所だ。

以下略 AAS



5:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/16(水) 01:00:38.44 ID:M4jexkrI0

 カゴを片手に店内を練り歩き、おかずになるものを探す。鮮魚売り場で珍しくサンマが安くなっていた。三尾の開きがまとめられたパックをカゴに入れる。

 それから青果と総菜を見て回り、一人暮らしの部屋の冷蔵庫の中身を頭に思い浮かべながら、商品を手に取っていく。途中、スナックコーナーでポテトチップスの袋と一分ほど見つめ合って、それは結局カゴには入れずレジへ向かった。

以下略 AAS



6:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/16(水) 01:01:29.97 ID:M4jexkrI0



 いつかの私の目の前にはきっと壁があった。

以下略 AAS



7:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/16(水) 01:02:11.17 ID:M4jexkrI0



「カバーはお付けしますか?」

以下略 AAS



8:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/16(水) 01:02:41.84 ID:M4jexkrI0

 今日も今日とて何でもないように仕事をこなしていく。日常が思い出の上にどんどん積み重ねられていく。

 そうやって味気ない日々に潰されていく思い出たち。その一番下に、今も潰えず残っているものはなんだろう。

以下略 AAS



9:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/16(水) 01:03:09.53 ID:M4jexkrI0



 休日。気付いたら十二月になっていて、気付いたら年の瀬だった。

以下略 AAS



10:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/16(水) 01:04:00.18 ID:M4jexkrI0



「氷川さんって東京出身なんですよね」

以下略 AAS



11:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/16(水) 01:04:35.72 ID:M4jexkrI0



 二月にしては陽射しが少しだけ柔らかくて、窓から差し込むその光を受けながら、ソファに腰かけて本を読んでいた。

以下略 AAS



12:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/16(水) 01:05:13.73 ID:M4jexkrI0



 東北地方はどんな場所でも冬に雪が積もるんだと勝手に思っていたけど、太平洋側に位置するこの都市ではそこまで激しく雪が降ることはない……というのは、一人暮らしを始めた最初の冬に知った。

以下略 AAS



13:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/16(水) 01:05:42.90 ID:M4jexkrI0

 発車します、というのんびりとした初老の男性運転手の声。ドアが閉まる音。車内の人々のささめき合い。それらに何ともないように混ざっている私。

 こうしていると、自分も普通の人間なんだなと思っていつも安心した。

以下略 AAS



14:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/16(水) 01:06:44.07 ID:M4jexkrI0

 かの有名な伊達男の彫像が立つ本丸跡からは、白銀に覆われた街や遠くの山々が一望できた。綺麗だな、と思うより早く、足が竦んだ。

 高い場所だ。ここの標高は130メートルくらいだと、一年前に書店で一度だけ目を通した観光案内の本に書いてあった。

以下略 AAS



15:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/16(水) 01:07:19.28 ID:M4jexkrI0



「あなたは……!」

以下略 AAS



16:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/16(水) 01:08:05.73 ID:M4jexkrI0



「久しぶりの再会なのにずっとだんまりだね。どしたの? 声をかけてきたのは千聖ちゃんでしょ?」

以下略 AAS



17:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/16(水) 01:08:32.22 ID:M4jexkrI0

「日菜ちゃんっ、あなたね……!」

「後処理、大変だった? それは謝るよ。勝手にいなくなってごめんね。でもみんなは今も頑張れてるじゃん? テレビ見たよ。“天下のアイドルバンド、パステルパレット緊急解散! メンバーの家庭環境が原因か?”……って。いいよね、悲劇のヒロインってさ。どこのテレビも雑誌も「かわいそう、かわいそう」って言ってて、いい宣伝だったでしょ? だからおあいこにしてよ」

以下略 AAS



18:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/16(水) 01:08:59.00 ID:M4jexkrI0

「それでどうしたの、千聖ちゃん。こんな場所で」

「……近くでドラマのロケがあったのよ。それで、噂を聞いたから」

以下略 AAS



19:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/16(水) 01:09:32.15 ID:M4jexkrI0



 天才だ。

以下略 AAS



20:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/16(水) 01:10:03.98 ID:M4jexkrI0

 きっかけなんてとっくのとうに忘れたけど、おねーちゃんはギターを始めた。カッコよかった。正確な音を刻み、凛々しい佇まいに感嘆のため息を何度も吐き出した。

 その隣に立ちたい。隣に並んで、一緒のことをやりたい。昔から何も変わらない行動原理に基づいて、あたしもギターを始めた。

以下略 AAS



21:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/16(水) 01:10:32.58 ID:M4jexkrI0

 おねーちゃんがギターに触らなくなったのに気付いたのは、高校二年生の時だった。

「どうしたの?」と聞いても、何も答えてくれなかった。ただ暗い顔であたしを一瞥して、それから部屋に籠ることが多くなった。

以下略 AAS



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