加群「鏡の向こうの」
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2:名無しNIPPER[sage]
2019/04/03(水) 21:02:51.25 ID:pOwoTKMWo

 学園都市。その街の中の、大勢の学生が行き交うとある大通りに一本の脇道がある。
 普通に暮らしている分にはさして通る意味のない、先の道に繋がっているのかも定かではないような薄暗い路地。
 人通りも多くなく、まれに好奇心旺盛な学生が気分転換半分でそこを歩き、特に変わったものを見出すこともないままに通り過ぎる程度。
 だが、彼らは気付かない。その道の途中、扉一枚隔てた向こうに、何があるのかを。
 まさしく日常の裏側に、それは潜んでいた。

「『バースデー』の亜流……いや、分類は重要ではないか」

 挨拶もなく踏み込んだ室内で、彼は記憶の中から大した意味を持たない文字列を思い起こす。
 彼は興味なさげに、眼前の容器の表面を擦った。

「しかしまあ、大層なものを作る」

 その中に浮かんでいるものは、果たしてなんだろうか。
 それの一部だけをそこらの通行人に見せれば、人だと答えるだろう。
 しかし他の一部を見せれば、犬と答えるかもしれない。
 更に他の部分ならどうだ。鳥、魚、虫、或いは機械、家具、食器、果てには書物。答えは多岐に渡るだろう。

 ただ一つ確かなことは、これが生き物だということだ。
 今は何らかの保存液の中に浸かっているこれも、外に出されれば空気を吸い込み生命活動を行おうとするだろう。
 それが可能なのかは別として。

 そんな『生命』が、この部屋には無数に存在していた。
 まさしく生命の冒涜、しかしその目的は恐らく、生命の研究。



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