水本ゆかり「維納に奏でる」
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12: ◆XUWJiU1Fxs
2019/04/25(木) 00:25:13.22 ID:cgXM4cARO
 爪先立ちをして待ち合わせている人を探すとご丁寧にツアーコンダクターが持つような旗をはためかせている姿が見える。
事前に貰っていた資料に掲載されている写真と見比べる。どうやらあの人が案内役らしい。

「お待ちしておりました! 水本ゆかりさんと担当のプロデューサーさんですね? 私、サンヨウツアーズの村松と言います」

以下略 AAS



13: ◆XUWJiU1Fxs
2019/04/25(木) 00:27:30.27 ID:cgXM4cARO
「見てください、プロデューサーさん。馬車が走っています」

「ば、馬車? ほんとだ……」

 ウィーン市街地までの風景を楽しんでいた俺たちの横を優雅に石畳を歩く二頭の白馬に引かれた馬車が通り過ぎる。
以下略 AAS



14: ◆XUWJiU1Fxs
2019/04/25(木) 00:28:04.79 ID:cgXM4cARO
「ふぅ……」

 ホテルに荷物を置いて一息つく。白を基調とした部屋の中は清掃が行き届いており、寝泊まりするのももったいないくらいだ。机の上置かれているウェルカムフルーツの甘い香りが心地よい。
窓の外を見ると先ほどとはまた別の馬車がパカラパカラと歩いている。目で鼻で耳で感じる東京にはない風景に、憧れのウィーンに来たんだという気持ちが強くなって行く。

以下略 AAS



15: ◆XUWJiU1Fxs
2019/04/25(木) 00:28:40.57 ID:cgXM4cARO
「ん……」

 どれくらい眠っていただろうか。重たい瞼を開けて軽く頭を振る。

「あれ?」
以下略 AAS



16: ◆XUWJiU1Fxs
2019/04/25(木) 00:32:45.80 ID:cgXM4cARO
「グリュースゴット、ゆかり」

 オーストリア語というものはなく、母国語はドイツ語だ。しかしグーテンタークという挨拶はあまり使わず、グリュースゴットが主流らしい。
元々はカトリック教の「汝に神のご加護がありますように」といった意味だとか。グーテンタークが通じないわけではないけども、カトリック教徒の多いオーストリアではこっちの方が一般的に使われるのだ。

以下略 AAS



17: ◆XUWJiU1Fxs
2019/04/25(木) 00:33:54.74 ID:cgXM4cARO
『無事ウィーンに着いたんですね』


「ええ、お陰様で」

以下略 AAS



18: ◆XUWJiU1Fxs
2019/04/25(木) 00:35:16.54 ID:cgXM4cARO
「唇にお髭ができていますよ?」

「えっ? あぁ、泡のことね」

 舌で上唇についた泡を舐める。三分の一くらい飲んだ後のグラスには泡の輪が出来ていた。
以下略 AAS



19: ◆XUWJiU1Fxs
2019/04/25(木) 00:36:28.19 ID:cgXM4cARO
「間違ってもデレぽにあげちゃダメだぞ?」

 一応オーストリア自体は16歳から飲酒が可能だが、厄介なことになるのは避けるが勝ちだ。

「分かっています! 有香ちゃんたちに見せてあげようと思って」
以下略 AAS



20: ◆XUWJiU1Fxs
2019/04/25(木) 00:36:54.11 ID:cgXM4cARO
 一滴程度のビールすら受け付けなかったあの頃を思い出す。生涯分かり合えることがないだろうと思っていた苦い水が美味しいと思えるようになったのはいつの頃だったか。
多分スーツを着て慣れないネクタイを結んで社会人と呼ばれるようになったあたりだと思う。

「私も美味しく飲めるでしょうか?」

以下略 AAS



21: ◆XUWJiU1Fxs
2019/04/25(木) 00:39:35.80 ID:cgXM4cARO
 パカラ、パカラ。蹄を鳴らしながら白馬は街中を我が物顔で練り歩く。通常の車よりも高い目線になる馬車はビルの二階の窓くらいの高さがあり、ちょっとした王様気分が味わえていた。

「カボチャの馬車ならシンデレラだったんだけどなぁ」

 オーストリアに来たのは撮影とライブのためだけど、それ以外は自由に観光する時間かある。レストランの食事を終えた俺たちはまず、ゆかりの希望でフィアカーで街中を巡ることにした。
以下略 AAS



22: ◆XUWJiU1Fxs
2019/04/25(木) 00:41:10.85 ID:cgXM4cARO
「なんでも彼が書いたフルート協奏曲の一つは、以前作っていたオーボエ協奏曲を全音あげただけのもので、父親に宛てた手紙にはこう書かれていたみたいです」

 我慢のならない楽器だと。ゆかりは寂しそうに話す。

「たしかに当時のフルート今のそれとは違って、発展途上の楽器。文字通りの木管楽器で音程も不安定なものだったそうです。だけど私は思うんです。本当はフルートを愛していたんだと」
以下略 AAS



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