2:名無しNIPPER[saga]
2019/05/28(火) 14:25:00.39 ID:VZdRWGZA0
その日、地球の遥か上空に位置する宇宙空間で、ある極秘の軍事作戦が行われようとしていた。ノイズの膜に被われた音声が、電波に乗って真空の暗闇を飛び交う。その声は、任務の中核を担う一人の少女の耳に届いていた。
『追跡班、両機の現在位置を報告』
『ポッド・ツー・ダッシュ、作戦高度に到達。予定軌道に乗った』
『ポッド・エイト、軌道投入に問題発生。高度が足りない』
『確認した。以後はツー・ダッシュ単独でのオペレーションに切り替える』
『了解。ポッド・エイトを直援。シフトをセブンに移行』
『ポッド・ツー・ダッシュ、不帰投点を通過。エリア88に侵入』
オペレーターの音声信号が次々と発せられる。作戦は滞り無く進行しているように見えた。
『了解。これより、US作戦を開始』
スピーカーから芯の強そうな女性の声が流れる。声の主は葛城ミサトだった。ミサトは、オペレーターからの報告の後に続いて、次の指示を飛ばす。
『了解。ポッド・ツー・ダッシュ、作戦最終軌道に投入開始。減速行動に移る』
女性オペレーターが、それに応じて状況を展開させる。
『第一弾、全エンジンを点火。燃焼を開始』
男性オペレーターの音声が聞こえた直後、輸送ポッドが激しい明かりを放って、暗闇の中に幾何学的なシルエットを浮かばせた。
『S1C、燃焼終了。減速を確認』
『第一弾、ブースターユニットをジェットソン』
ポッド本体から4つのブースターユニットがゆっくりと分離する。そして、充分な距離に達したところで推進装置が作動し、本体の軌道を外れて暗闇の中へと消えて行った。
『分離を確認。電装系をチェック。異常なし』
『了解した。燃焼タイミングはオート。第二弾全エンジンを点火』
二度目の点火によって、暗闇の中に局所的な明かりが灯る。ポッドの周囲には、大量のデブリが浮遊していた。
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