77: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/06/10(月) 23:08:25.72 ID:9pdDfgPfo
   
 「……なんでよ…………ここまでしてるってのに…………バカ……バカ……バカバカバカバカっ……!! ばかぁっ!!」 
  
 力の入らない両腕でエミリーの肩をわずかに揺する。 
  
 「《思い出してよっ……!! どうすれば思い出すのよっ……!!》」 
 「《ごめんなさいっ……ごめん……なさいっ……》」 
 「こんなの嫌よっ……バカ……バカばかばかっ……こんなことで大和撫子を諦めるんじゃないわよっ……!! どうしたらいいのよっ……!!」 
  
 お互いに止まらなくなって、しばらく泣きじゃくった。 
 そのままどのくらいいただろうか、ようやくちょっとだけ頭が落ち着いてきたとき、目に入ったものがあった。 
  
 部屋の反対側、ベッドサイドテーブルの上に置かれていた、大きなハサミ。 
  
 しばらくボーっと眺めた後、ふと、ひとりでに言葉が口をついた。 
  
 「──そうよ……パッツンなのよ……」 
 「《……えっ……?》」 
  
 自分自身の台詞に誘われるようにゆっくりと立ち上がって、吸い込まれるようにそちらへ向かった。 
 滲んだ視界を頼りにそれを手に取ると、冷えきった金属の感触だけが鮮明に指へと伝わってくる。 
 そのまま一歩ずつ、もう一度エミリーへ近寄った。 
 彼女は不可解なものを目撃するような目つきをしていた。 
  
 「…………エミリー、見なさい。 ……こっち見て……!!」 
 「《何を……》」 
  
  
 こうなりゃ──ヤケよ。 
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