7: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2019/07/13(土) 21:39:39.37 ID:l6pE73h60
  
  目覚めると、背中に柔らかな感触があった。 
  
 「ん〜……?」 
  
8: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2019/07/13(土) 21:42:21.73 ID:l6pE73h60
  
  二段ベッドの柵から首だけ出して下を覗くと、ペパロニが幸せそうな表情でかーかーと眠っていた。 
  
  彼女を起こさないようにゆっくり階段を下り、クローゼットからアンツィオの制服を取り出す。 
  さっと着替えて、机の横に置いた籠からポーチを手に取ると、私は部屋を出た。 
9: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2019/07/13(土) 21:43:53.11 ID:l6pE73h60
  
 「今日は遅いっすね。もしかして朝練はなしっすか? だぜ」 
  
  顔を上げたパネトーネが言う。 
  
10: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2019/07/13(土) 21:46:13.73 ID:l6pE73h60
  
 「あのな、お前たち、悔しいけど我々は負けたんだ」 
 「幸い、今年は無限軌道杯も復活する。負けは負け。そのことをきっちり認識して、前に進まないとな」 
  
 「ドゥーチェ、おかしくなっちゃったんすか?」 
11: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2019/07/13(土) 21:47:52.83 ID:l6pE73h60
  
 「私たち、昨日、大洗と試合をしたよな?」 
  
 「してないっす」「夢じゃないすか? だぜ」 
  
12: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2019/07/13(土) 21:50:07.82 ID:l6pE73h60
  
  血の気が引くのを感じた。 
  
  ポーチもそのままに、二人へ背を向け廊下を駆け戻る。 
  
13: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2019/07/13(土) 21:53:34.81 ID:l6pE73h60
  
  私の想像に反して馬鹿なことというのは起こるもので、時間が巻き戻ったのはカレンダーだけの話ではなかった。 
  スマホでニュースサイトを眺めても、アンツィオのみんなに訊いてみても、いま私がいる時間は大洗との試合の一週間以上前とのことだった。 
  
  どうやら私は、タイムスリップというやつを体験してしまったらしい。 
14: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2019/07/13(土) 21:55:46.81 ID:l6pE73h60
  
  あっという間に一日が終わって、翌日、土曜。 
  
  さて今日も戦車道の練習だ、という段になって、ふと思った。 
  
15: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2019/07/13(土) 21:57:20.78 ID:l6pE73h60
  
  全身が、かっと熱く燃え上がった。 
  
  まだやれる。まだやれるのだ。 
  アンツィオの夏はまだ終わっていない。 
16: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2019/07/13(土) 21:59:23.01 ID:l6pE73h60
  
  大洗と試合をした経験は私の中に宿っている。 
  これまで通りやれば大洗に敗北してしまうことを、私は知っている。 
  
  戦術を変える必要がある。 
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