【モバマス】 木村夏樹「道とん堀には人生がある」
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35:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/15(月) 04:59:26.97 ID:VQj+6fZHO


 プロデューサーが油を引き、もんじゃの具材を鉄板へ移す。
 もち明太子チーズもんじゃ――スライス餅・明太子・刻みチーズ・刻みネギ・天かす・紅生姜などを具材とするもんじゃ焼きである。

 鉄板へ移した具材、まだ固い餅は一旦横へ置き、先に他の具材をコテでカチャカチャと刻んでいく。
 ある程度細かく刻んだら、その具材でドーナツ状の土手を作る。もんじゃの具材が入っていた容器、そこに残った出汁を土手の真ん中空きスペースへ注ぐ。土手から溢れないように、適量を注いだら少し放置。

 その間に夏樹はお好み焼きの注文を済ませ、空いたグラスを両手に持ってドリンクバーへ。

 それを見送ったプロデューサーは、鉄板上で柔らかくなったスライス餅を何度か刻み、細かいブロックに分ける。
 そして土手と出汁をごちゃ混ぜにして、ここで餅も投入。全てを更に混ぜ、刻む、刻む、刻む……。
 原型が完全になくなったら、再び土手を形成し、残った少量の出汁を全て注ぐ。

 やがて一度目の放置より短い時間で、すぐに土手を崩して混ぜる。溶けたドロドロの物体をダメ押しとばかりに何度か刻んで、そしてこねくり回し、コテで鉄板上に広げる。

 コテにこびりついたドロドロ状の物体をこそぎ落とし、そうしてプロデューサーは息を吐いた。

 これでもんじゃ焼きの完成である。


「まあ、時間は限られているが、焦らずいこうぜ」
「ああ、小休止ってやつだな」


 言葉はいらない。それぞれがそれぞれの仕事をこなし、完成を待つ。
 ドロドロの物体はマグマのようにボコボコと泡を立てては破裂を繰り返す。


「よし、いただくか」


 あまりゆっくりし過ぎても焦げてしまうのがもんじゃである。


「お、いい感じに焦げてるね……。見れば分かる、これ絶対うまいやつだ」


 とは言っても、適度に焦げたもんじゃはこれもまた格別だ。というか、これがもんじゃ焼きの至高と言っても違いないだろう。


「んー、んまひ……!」


 明太子が溶けたそれはピンク色をして、一見するとまさしくマグマのようだが、それをもんじゃ用のコテですくうと、餅とチーズが入っていることもあり、ずーっと糸を引くように伸びる。

 鮮やかなピンクと黒い焦げ。そんな禍々しい物体を口へ運ぶ夏樹。

 熱々のそれは口の中に不思議な感触をもたらし、ねっとりとまとわりつくようなネバネバ感がやって来たかと思えば、サクサクとした香ばしい焦げの食感もやって来て、それが交互に繰り返された後にジワリと溶けて消えていく……。

 また、時折溶け残った餅がその存在をアピールするかのようにモチモチと主張し、そんな餅の甘味にチーズの滑らかさが加わって、クリーミーなシェークのように流れていく。

 メインとなる味は明太子であるが、その粒々した感じも残っていて舌触りがよい。
 明太子のしょっぱさ・辛さをチーズが和らげ、そこに餅が甘味を加えてクリーミーにさせる。更に焦げのサクサク感のアクセントと香ばしさもあって、美味しいだけではなく、楽しい料理だ。

 禍々しいビジュアルにある意味似つかわしい、悪魔的な美味さ。
 カオスを溶かしたような、快楽と堕落が均等に混ざり合ったかのような、禁断の美味である。







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