6: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2019/07/24(水) 12:26:21.18 ID:rmJoFnhWo
  
  それから、考える。ここはどこだろう?  
  足元には黒のアスファルト。それから、いつの間にか引かれていた、なにやら意味ありげな白線模様。どうやら、これが私にとって最も自然な状態らしかった。 
  そうして綺麗に対比する二つの並びには、やはりというか、はっきりとした見覚えがある。 
  これは多分、交差点だ。 
7: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2019/07/24(水) 12:27:09.97 ID:rmJoFnhWo
  
 「空」 
  
  その水色は、つまり青空だ。 
  
8: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2019/07/24(水) 12:27:55.35 ID:rmJoFnhWo
  
 「青空っすよ、やっぱり」 
 「なるほど。そこでループになっているわけだ」 
  
  プロデューサーさんが頷きながら言う。 
9: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2019/07/24(水) 12:28:39.56 ID:rmJoFnhWo
  
  プロデューサーさんがいったい何を探していたのか、私には分からなかった。 
  だけど、どうやら彼女は何かを見つけたようで、ふっと手元に視線を落とす。 
  
 「でも、意味なんて必要ないね。もう少し考えてみようか」 
10: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2019/07/24(水) 12:29:14.11 ID:rmJoFnhWo
  
  彼女と私は、時々こういった話をする。 
  たとえばいまみたいに、予定と予定との間に生まれたどうしようもない空白の時間なんかを使って、具体性なんてどこにもないような話をする。 
  そして、それは大抵の場合、私のほうから何かを切り出して、彼女がそれに様々な補足を加えていく、という風に展開していく。 
  今日も例に漏れずそうだった。 
11: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2019/07/24(水) 12:29:54.24 ID:rmJoFnhWo
  
  私が話している間、プロデューサーさんは相槌も打たないで、ただひたすらに沈黙していた。 
  きゅっと結んだ唇に添えられた人差し指が、時々微かに動いていた。 
  彼女の様子は、ともすれば話を聞き流しているだけのようにもみえるだろう。 
  だけど、彼女がなにか思考を巡らせるとき、その小さな右手が顎の辺りへ触れることを私は知っていた。 
12: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2019/07/24(水) 12:30:36.85 ID:rmJoFnhWo
  
  プロデューサーさんは続ける。 
  
 「しかし、いまの場合はそれほどうまく繋げられないかもしれないな。何せ、これは連想ゲームだ。鶏と卵みたいに分かりやすい関係性があるわけじゃない」 
 「そうっすね。水色と青空となら、水色のほうが卵っぽいっすけど」 
13: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2019/07/24(水) 12:31:13.85 ID:rmJoFnhWo
  
 「それは、青空っす」 
  
  私は答えた。 
  
14: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2019/07/24(水) 12:31:42.35 ID:rmJoFnhWo
  
  水色は、青空の色だ。 
  私が青空のことを思い浮かべるときに水を連想する理由は、だから先ほどの結論から考えるのなら、青空の色を無意識のうちに水へ投影しているからということになるのだろう。 
  本来の水は透明色だけれど、私の中でそれは空の色としてインプットされている。 
  どうしてだろうか? 
15: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2019/07/24(水) 12:32:11.07 ID:rmJoFnhWo
  
 「あっ」 
  
  思わず声が洩れる。 
  
16: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2019/07/24(水) 12:32:41.60 ID:rmJoFnhWo
  
 「へえ。もう見つけられたんだ」 
 「本当に何となくっすけど」 
 「たとえ不確かでも、あさひが見つけたのならきっとそれが正解だろうと思うよ」 
 「正解、なんすかね。たしかに、もうこれしかない、って気はするっすけど」 
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