1: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2019/09/16(月) 22:47:46.08 ID:ajLiiV4A0
 
 暦の上では秋とはよく言うし、街のご飯屋さんのメニューも秋刀魚やら栗ごはんやらが目立つようになってきたけれど、依然として太陽は健在のようで、じりじりとした日差しは容赦なくあたしの頭めがけて降り注ぐ。 
  
 「あっついなぁ」 
  
 八月の頃よりは多少気温が落ちたものの、多少では日中にジャケットを着込むには適さない。 
  
 濃紺のスーツに身を包んだ男、あたしの担当プロデューサーであるそいつは、額に汗を浮かべつつ恨めし気に太陽を見上げて言う。 
  
 「大変だよなぁ。プロデューサーさんは」 
  
 「そうだぞー。奈緒と違って誕生日も祝ってもらえないし」 
  
 プロデューサーさんはびしっとあたしの手元を指で示して軽口を叩く。 
  
 それを受けて、あたしも視線を落とす。 
  
 色とりどりの花々が綺麗に束ねられていた。 
 
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2: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2019/09/16(月) 22:48:47.66 ID:ajLiiV4A0
  
 「誕生日の日、どうしても午前中に収録のお仕事が入ってしまった」プロデューサーさんにそう聞かされたのはひと月前で、あたしだって子供ではないから、すぐにその場で仕方ないよな、と受け入れたのを覚えている。 
  
 そして誕生日当日が今日で、収録の終わりがさっき。 
  
3: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2019/09/16(月) 22:49:46.13 ID:ajLiiV4A0
  
 そうこうしている内に、目的の社用車が駐車してある場所に着く。 
  
 ドアのロックが解除される音を待って、その後に助手席に乗り込んだ。 
  
4: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2019/09/16(月) 22:50:57.76 ID:ajLiiV4A0
  
 助手席からぴょん、と降りて一足先に事務所に入る。 
  
 廊下を抜けて、休憩室を窺うとスマホをいじっている友人、凛の姿があった。 
  
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