37:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 22:15:53.55 ID:QXbKSZYO0
  ――それもそうか。 
  確かに、私達は同じプロジェクトの仲間。立場は対等、だな。 
  
  
 「では、アーニャ」 
  
  
  思い切って口に出してみると、思いのほか言いやすくて驚いてしまう。 
  
  目の前の彼女は、とても嬉しそうに微笑んでいる。 
  何だか気恥ずかしくなり、咳払いをして仕切り直した。 
  
 「アーニャさんは、アイドルになりたくて、この事務所に入ったのですか? 
  レッスンへの姿勢を見ても、すごく誠実で、熱心に取り組んでいると思ったので」 
  
  さん付けに直すと、彼女はどことなく残念そうに苦笑した。 
  
  私にもペースというものがある。どうか斟酌してほしい。 
  いや、斟酌という言葉も、彼女には少し難しいのか――。 
  
  
 「レッスンは、好きです。 
  出来ないこと、たくさんあるから、それはとても、嬉しいことですね」 
 「嬉しい?」 
  
  何が嬉しいのだろう。 
  ひょっとして、言葉を間違えているのではないか。 
  
  私が訝しむ表情を見せると、彼女はそれを“斟酌”したらしい。 
  彼女は小さく頷き、丁寧に言葉を選びながら話を続けた。 
  
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