81:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 23:53:14.52 ID:QXbKSZYO0
  出番が訪れ、意を決してアーニャさんと二人、ステージに立つ。 
  
  美波さんが急遽リタイヤしてしまった旨は、既に冒頭でアナウンスされている。 
  彼女の出番を期待してきた観客は、代わりにやってきた私を見てさぞガッカリすることだろう。 
  
82:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 23:55:48.09 ID:QXbKSZYO0
  後になって知ることだが、あの場には私の出番に期待して来たという観客も一定数いたらしい。 
  元々、ステージパフォーマンスの仕事が多くなかっただけで、思い返せば、他の仕事での露出は少なくなかった。 
  
  アイツの宣伝戦略、と認めるのは些か釈然としないが――。 
  
83:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 23:59:05.55 ID:QXbKSZYO0
  ――――。 
  
  一言で言えば、上出来だったのだろう。 
  
  
84:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 00:01:25.83 ID:1/ZkFkMM0
 「……美波さん!?」 
  
  なんと、メンバーの中には、先ほどまで医務室で寝ていたはずの美波さんまでいた。 
  いつの間にかステージ衣装に着替え、ピンシャンとしている。顔色も良い。 
  
85:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 00:08:13.47 ID:1/ZkFkMM0
 「でもさ、ちよちー。楽しかったでしょ?」 
  
  後ろから肩をポンッと叩かれ、未央さんがニカッと歯を見せて笑う。 
  
 「これからもぉーっと楽しいことが待ってるにぃ☆」 
86:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 00:21:00.83 ID:1/ZkFkMM0
  曲が始まると、その場の空気の隅々が一斉に熱を帯び、私達と共に音と光が縦横無尽に弾け飛ぶ。 
  お嬢様もそこにいるであろう観客席は、もはや言うまでもないほどの盛り上がりようだ。 
  
  ラブライカの『Memories』とは違い、『GOIN’!!!』は前々からしっかり練習を積んでいた曲だ。 
  それに、今のこのステージ上には、馴染みのある15人のシンデレラプロジェクトのメンバーが勢揃いしている。 
87:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 00:22:08.62 ID:1/ZkFkMM0
  アーニャさんとの天体観測の時といい、最近の私はどうかしている。 
  
  これは、あの日お嬢様と一緒に見たライブの映像と、よく似ている。 
  私がいるべき世界とは、まるで遠いものだったはずの――。 
  
88:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 00:23:57.31 ID:1/ZkFkMM0
 「はぁ……はぁ……!」 
  
  あのまま倒れていたらと思うと、ゾッとする。 
  皆とのステージを台無しにするところだった。 
  
89:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 00:28:05.28 ID:1/ZkFkMM0
  近く、世界的なスポーツの祭典が東京で行われるに辺り、その暑さ対策が様々に検討されていた。 
  この日に舞い降りた雪も、その一環だったという。 
  つまり、人工雪による冷却効果の実証実験を行う場として、346プロがその事務局側の公募に応じたのだ。 
  
  真夏とはいえ夜間の、しかもアイドルのライブという、様相も条件も異なるものにも採用された辺り、まるで節操が無い。 
90:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 00:28:43.17 ID:1/ZkFkMM0
 「……アーニャさん?」 
  
  
  
  後になって知ったが、人工雪による演出は、アーニャさんの強い希望があったのだという。 
91:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 00:30:45.13 ID:1/ZkFkMM0
    * * * 
  
  ―――― 
  
  
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