渋谷凛「これは、そういう、必要な遠回り」
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6: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2019/12/08(日) 20:26:00.53 ID:clFucneV0



喫茶店に入り、席に通されるのと同時にコーヒーを注文し、早速今後の方針を決めるため、持ってきた荷物を机上に広げた。

来るまでに購入したメモ帳と、アイドル時代のスケジュール帳が三冊。

さぁ、何から手を付けたものか。

まずはアイドルとなって初めての年に使っていたスケジュール帳をぱらぱらとめくる。

そして四月のページを開いて、気付く。

とある日付、数年前の今日に、控えめな字で『スカウト』と書かれていた。

そしてその翌週にも、控えめな字で『スカウト』と書かれている。

ああ、そういえば一回目は今日だったか。

すっかりと忘れてしまっていた。

アイドルであった頃は、この日が来るたびに「スカウト記念日おめでとう」なんて言って、プロデューサーがケーキを買ってくれていたことを思い出して、口角が上がる。

ちなみに、どうでもいいことであるが、翌週も同じように、彼は「スカウト記念日おめでとう」と毎年楽しそうに祝っていた。

なぜ二回もスカウト記念日があるか。

それはいろいろとワケありなのだが、端的に言えば私は、アイドルに二回、スカウトされている。

もう何年も前の話だ。

当時、高校に入学したばかりだった私は数奇な縁から芸能界への招待状を二度、受け取った。

一度目は当然、断った。

あまりにも現実味がなかったし、何よりも自分はそんな柄ではないと思ったからだ。

しかしながら執念というのは恐ろしいもので、この広い東京の街で一度偶然会っただけの私を探し出し、二度目のスカウトを行った男がいる。

それが私を芸能界に引き入れた張本人であり、芸能界での私と共に歩んだあの男、プロデューサーである。

詳しく語れば長くなるが、私が彼を探してやろうと思った理由を理解してもらうためには避けては通れない。

一度目のスカウトから順に話すとしよう。



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