70: ◆tues0FtkhQ[saga]
2019/12/25(水) 00:53:35.42 ID:yU6CR/tX0
  
  
  4人で並んで座って前を向けば、モニターからはひときわ大きな歓声があがった。みんなが入れ替わり立ち替わり、出番を迎えて控室を出たり、入ったりする。その間にもボルテージはどんどんあがっていく。いつも以上にみんな張り切ってるのかもしれない。ペンライトもコールもどんどん揃って、今までのどんなライブよりも最高を更新していく。アタシたちの出番は近づいていく。 
  
  「Four Wind Colorsのみなさん、舞台袖までお願いします」 
71: ◆tues0FtkhQ[saga]
2019/12/25(水) 00:54:02.83 ID:yU6CR/tX0
  
  
  みんながセンターをしてくれたときはどうしてたんだっけ。こんなときアタシがもっと頼りがいのある人だったら、マジメで全力な人だったなら、でもそんな「もしも」はもう必要ないんだってすぐに分かった。みんなが教えてくれたアタシはどんなことをするんだろうって考えて、舞台袖で待っているプロデューサーサンと目が合う。様子にすぐ気付いたプロデューサーサンが声をかける前に、アタシの声が先に届く。 
  
 「舞台袖って英語でなんて言うか知ってる?」 
72: ◆tues0FtkhQ[saga]
2019/12/25(水) 00:54:29.20 ID:yU6CR/tX0
  
  
  アタシは翼を広げるポーズをとった。肇チャンと悠貴チャンは顔を見合わせて、そして同時に吹き出した。舞台袖に控えめだけど緊張も溶かすような確かな笑い声が響いて。それが落ち着いたら自然と全員が円を作ってくれた。 
  
  声をかけるのはたぶんアタシ。だから教えてもらった大切なことを繰り返す。 
73: ◆tues0FtkhQ[saga]
2019/12/25(水) 00:55:00.43 ID:yU6CR/tX0
  
  
 ◇ 
  
  
74: ◆tues0FtkhQ[saga]
2019/12/25(水) 00:55:26.47 ID:yU6CR/tX0
  
  
 「アタシたちーっ!」 
  
 「「「「Four Wind Colorsですっ」」」」 
75: ◆tues0FtkhQ[saga]
2019/12/25(水) 00:55:56.58 ID:yU6CR/tX0
  
  
  当たり前だけどマジメ柚チャンも無駄ではなかったみたい。たくさん練習したからびっくりするくらい順調に間奏まで歌いきれた。いつもはちょっとくらいミスをして誤魔化したりすることだってあるのに。そう思っていたのに。 
  
  ざざっ。 
76: ◆tues0FtkhQ[saga]
2019/12/25(水) 00:56:25.78 ID:yU6CR/tX0
  
  
  センターだからそうしなくちゃいけないとか、なにかあったときのマニュアル対応とかそういうのは全部飛んでしまった。でも、だからこそ、アタシはイヤモニを片耳外して、次の瞬間にココロを言葉にできた。 
  
 「みんなで歌おうっ!」 
77: ◆tues0FtkhQ[saga]
2019/12/25(水) 00:57:06.70 ID:yU6CR/tX0
  
  
  最初に反応してくれたのは悠貴チャンだった。間奏の振りをやめて片手を振ってラララを紡ぐ。肇チャンはカラダを揺らして誰よりも大きな声でメロディーを引っ張ってくれた。美世サンは盛り上げ上手だから、マイクを見てくれてるみんなにさっと向けてくれて。アタシたちのラララが揃った。 
  
  キレイなウエーブみたいに困惑のざわめきがシンガロングに変わっていく。アタシの声はあっという間に大きな絵筆で世界を塗り替えてしまった。大反響のラララがアタシたちに返ってきて、それをまた楽しいって気持ちにして返して、そうしてラリーは続いていく。そうしたら自然と言葉が溢れた。 
78: ◆tues0FtkhQ[saga]
2019/12/25(水) 00:57:32.81 ID:yU6CR/tX0
  
  
  どうにか間奏の間に周りの音が少しずつ戻ってきて。3人が中心を向く。その瞬間をぐるりと見回して、切り取ってしまいたいって、世界で最高の1枚になるんじゃないかって思った。舌をぺろっと出して合図をすれば、みんなの笑顔が弾ける。さぁ、ラスサビに戻らなくちゃ。 
  
 「みんな行くよーっ♪」 
79: ◆tues0FtkhQ[saga]
2019/12/25(水) 00:58:13.52 ID:yU6CR/tX0
  
  
 ◇ 
  
  
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