11:名無しNIPPER[sage saga]
2019/12/25(水) 05:30:01.82 ID:77T4edg60
「今日は、クリスマスなんですよ……」
熱々の肉まんを小さな口に運びながら、彼女は幸せそうに目を細める。
肉まんの湯気と吐息が合わさって、彼女の口元には白いもやが浮かんでいた。
それから彼女はもぐもぐと口を動かして、小さな身体で精いっぱいに呑み込んだ。
それが天使なんかではなく、生きるために食べ物を食べるという。彼女を人間たらしめる証拠のようで、思わず見とれてしまっていた。
「私の寮では、今日はみんなで集まってお菓子を分けっこしあいました……」
聖さんは肉まんを膝のあたりに下ろすと、それをキラキラした視線で見つめながら話を続ける。
「神様への祈りも、そうですが……。みんなが、一緒に居られることをお祝いしたいって……、シスターのお姉さんが考えてくれたんです……」
小さな手が温かい食べ物を包み込みながら、零れ落ちそうなくらいに喜びの表情を見せる。
その横顔は、聖母、敬虔に祈る信徒、迎えの天使、イノセント。
そんな神秘的な印象を与えつつ、どこまでも人間らしい暖かみを放っている。
年頃の、一人の女の子。
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