118: ◆hhWakiPNok[saga]
2019/12/28(土) 15:12:21.77 ID:G9OiTGlK0
 P「B-58ハスラーは、アメリカ空軍初の超音速爆撃機だった。要はものすごい速さで現地まで飛んでいき、爆撃をして去っていく……そういう想定の航空機だった。だが……」 
  
 蓮実「?」 
  
 P「ハスラーは制式採用されたものの、実際に配備された時には戦略的にもコンセプトとしても、そして機体も既に時代遅れになっていた」 
119: ◆hhWakiPNok[saga]
2019/12/28(土) 15:12:50.54 ID:G9OiTGlK0
 P「言われても仕方ない……そうも思っていたさ。図星を指されていたから、俺もそう呼ばれたくなかったかも知れない」 
  
 蓮実「そんなこと……」 
  
 P「事実、現場を離れてからは俺は大した業績を残しちゃいない。俺が担当を外れ、その後は個人事務所を立ち上げて自立したSが今も人気なのとは逆にな」 
120: ◆hhWakiPNok[saga]
2019/12/28(土) 15:13:28.27 ID:G9OiTGlK0
  珍しい、感情を露わにした蓮実の言葉に、俺は視線を落とす。 
  Sに才能があったのは間違いない。そしてそれをSは、必死で磨いた。結果、世で評価された。 
  
  俺でなくても良かったのではないだろうか――? 
  
121: ◆hhWakiPNok[saga]
2019/12/28(土) 15:13:54.39 ID:G9OiTGlK0
  そうだったな―― 
  俺が担当をしてくれるなら、アイドルになる……そうこの娘は言ってくれたのだった。 
  一緒に夢を育てよう、そう言ったから彼女はアイドルになってくれた。 
  夢を……一緒に育てる! 
  
122: ◆hhWakiPNok[saga]
2019/12/28(土) 15:14:23.52 ID:G9OiTGlK0
  全てがわかった気がした。 
  俺はこの瞬間、理解した。 
  俺が、この娘を時に大胆に、そして時に笑顔に、更には余裕を与えていたのだ。 
  
 蓮実「それにハスラーさん? 心配しなくてもレトロは、アイドルと戦闘機の組み合わせを経験済みなんですよ?」 
123: ◆hhWakiPNok[saga]
2019/12/28(土) 15:14:50.87 ID:G9OiTGlK0
 蓮実「ハスラーさん?」 
  
 P「ん? な、なんだ?」 
  
 蓮実「出会い、おぼえていますか」 
124: ◆hhWakiPNok[saga]
2019/12/28(土) 15:15:29.39 ID:G9OiTGlK0
  
  翌日にはSの番組への正式なオファーが届いた。 
  バラエティー的な側面もある番組だがやはりメインは、歌謡トーナメントだ。 
  8人のアイドルが歌を含めたパフォーマンスを披露し、勝ち抜き戦で優勝を決める、とある。 
  
125: ◆hhWakiPNok[saga]
2019/12/28(土) 15:16:08.09 ID:G9OiTGlK0
 P「蓮実、当初の予定とは違ってしまったが、出た賽の目を楽しもう。世間の注目の集まっているここで優勝して、一気にトップアイドルへと駈けあがろう」 
  
 蓮実「はい! Sちゃんの前で優勝します」 
  
  頼もしいな。 
126: ◆hhWakiPNok[saga]
2019/12/28(土) 15:16:38.04 ID:G9OiTGlK0
    ◆   ◆   ◆   ◆   ◆ 
  
 蓮実の日記 
  
  こわい。 
127: ◆hhWakiPNok[saga]
2019/12/28(土) 15:17:05.77 ID:G9OiTGlK0
 蓮実「あの、今日のレッスンは外でするんですか?」 
  
 P「そうであるとも言えるし、そうでないとも言えるかな」 
  
  少し青い顔をしていた蓮実から、笑みがこぼれる。 
128: ◆hhWakiPNok[saga]
2019/12/28(土) 15:17:39.63 ID:G9OiTGlK0
 P「言っておくが、それは悪いことじゃない。初めての収録を前にして、なんの根拠もなしに自信満々でいられても、それはそれで問題だ」 
  
 蓮実「そういう……ものですか?」 
  
 P「コトの重大さを理解していたら、とても楽観的に構えていられないだろうからな。恐いということはそれだけ、現状把握ができているということだ」 
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