13: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 09:12:08.36 ID:ck9R+qDf0
  その日の授業は、まったく頭に入ってこなかった。 
  生来まじめな紗代子としては、それが良くないことだとはわかってはいたが、それでもアイドル候補生になれたことに浮かれている自分を責めることはできなかった。 
  幼少の頃からの夢。そして約束。 
  それが現実になる道が、最後の望みも断たれて途絶えたはずの道が、繋がったのだ。 
  学校が終わると紗代子は、夕日に染まる駅へと走っり、そのままの勢いで765プロへと急いだ。 
14: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 09:13:30.99 ID:ck9R+qDf0
 瑞希「挨拶もせずに、帰ってしまいました……いえ、しようとは思ったのですが、高山さんがひどく落ち込んでおられたので……私はてっきり高山さんはオーディションに落ちたのだと思って声をかけられなかったのです……早とちりだぞ瑞希」 
  
 紗代子「ううん。気にしないで。それに私、瑞希ちゃんの言う通り昨日は落選だったんだ」 
  
 瑞希「はて。昨日は……ということは、今日は違うということですか?」 
15: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 09:14:10.75 ID:ck9R+qDf0
 青羽美咲「はい。みなさん、こんにちは。本日みなさまに今後のことをご説明させていただく青羽美咲と申します。よろしくお願いいたします」 
  
  その場にいた複数名の娘たち……おそらくは紗代子と同じアイドル候補生であろう全員が挨拶を返す。 
  
 美咲「まずは、当事務所の事と契約等に関することなどの資料をお渡しします。呼ばれた方は、取りに来てくださいね。それでは、篠宮可憐さん……豊川風花さん……真壁瑞希さん……」 
16: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 09:14:39.98 ID:ck9R+qDf0
 美咲「高山……紗代子さん?」 
  
 高木社長「失礼するよ」 
  
  そう言って、全身真っ黒な男性が入ってくる。 
17: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 09:15:30.40 ID:ck9R+qDf0
 高木社長「私じゃないんだよ。君を合格にしたのは」 
  
 紗代子「あ、そ、そうなんですか?」 
  
 美咲「こちらは当765プロの社長、高木順二朗さんです」 
18: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 09:16:15.01 ID:ck9R+qDf0
 高木社長「だから、とりあえずレッスンなどは他の娘と一緒にやってもらう。そして随時、君には彼から連絡があるはずだ」 
  
 紗代子「わかりました。私、がんばります」 
  
 高木社長「ああ」 
19: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 09:17:02.86 ID:ck9R+qDf0
  
 紗代子「ふうー……劇場、すごい設備だったなあ。私もいずれ、あのステージに立つのかな……あ、ううん! 立つんだ。そのためにがんばらなきゃ」 
   
  わずか1日、昨日と今日で目指す目標が全然違う。 
  昨日の自分は、夢との決別を悩んでいた。 
20: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 09:19:36.70 ID:ck9R+qDf0
 小鳥「全部紗代子ちゃんの才能……あ、ごめんなさい、馴れ馴れしく呼んじゃって」 
  
 紗代子「あ、いいんですよ。765プロの人にそう呼んでもらえると、本当に自分もその一員になれたんだ、って思えますし」 
  
 小鳥「そう? じゃあ、これからも紗代子ちゃんって呼ばせてもらうわね。それで紗代子ちゃんの担当プロデューサーさんなんだけど」 
21: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 09:20:52.47 ID:ck9R+qDf0
 紗代子「ええ、私はそれで構いませんけど、海外の仕事でお忙しいのに 私のレッスンまで目を通してもらってなんだか悪いですね」 
  
 小鳥「まあ……そこは気にしなくてもいいと思うわ」 
  
 紗代子「え?」 
22: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 09:21:49.97 ID:ck9R+qDf0
 小鳥「なにかしら?」 
  
 紗代子「ありがとうございます……って、伝えていただけますか」 
  
 小鳥「……それはプロデューサーさんからの連絡に、直接した方がいいと思うわ」 
23: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 09:22:41.44 ID:ck9R+qDf0
  件名は『プロデューサーより』となっており、さっそく本文を開いてみる。 
  
 『これはビジネスだ』 
  それが最初の一文だった。 
 『君は本来、合格者ではない』 
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