13: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:04:59.45 ID:hoMUvMIQo
「高校生活はどう? 楽しい?」
交差点を右に折れる。身体は自ずと左に傾斜する。
車はもう、事務所前の見慣れた通りに差し掛かっていた。
「別に。普通っすよ」
目を閉じる。
透明な暗闇の中に、私は一人きりで立っている。そんな光景を想像する。
雨が降っている。
私はその青色に打たれながら、傘も持たずに、空っぽの空をただ見上げている。
雲なんてどこにもなくて、それなのに雨が降っている。
肌に触れた冷ややかなノイズは耳を伝って、私という空っぽの器をいっぱいに満たし、それ以外のあらゆる音と一緒に、私の意識をもどこか遠くへ攫っていく。
だから。
「プロデューサーさんは」
だから、私は尋ねたんだ。
あの日、酷い雨の夜、助手席から。
「わたしに、何者であってほしいっすか?」
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