11:名無しNIPPER[saga]
2020/01/11(土) 21:46:06.47 ID:uct5lrwh0
わたしは長い間ある家の物置部屋にいた。
元々わたしの持ち主はその家の娘だったのだが、大人になって他の家に嫁いでしまい、以来わたしは箱に入れられ物置にしまわれていたのだ。
あるときわたしはそこから運び出され、何十年ぶりに箱から取り出された。
わたしを抱えたのは、10歳くらいの女の子だった。
彼女はこの家の夫人の遠縁の子で、元々は母親と二人暮らしをしていたそうだが、
この母親というのが何やら問題のある人物だったらしく、それが原因で一時的にこの家に預けられることになったそうだ。
裕福な家主夫妻は、憐れな少女を大いなる慈しみで迎え入れた。しかしそのどれよりも彼女はわたしとの時間を大事にした。
内気な子だから、いくら優しいお金持ちとはいえ知らない夫婦に優しくされても不安なだけだったのだろう。
知らない土地で、知らない人たちに囲まれ、心を許せる相手もいない生活。
わたしは彼女に名前を与えられ、彼女のたった一人の遊び相手になった。
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