24:名無しNIPPER[sage saga]
2020/03/19(木) 22:49:31.69 ID:z07AMiQQO
  
 「こんにちは。珍しいですね、商店街のこの辺りにいるのって」 
  
 「え、ええ、そう……ですね……」 
  
  紗夜は平静を装って頷くけれど、心の内では地団駄を踏み、髪を掻きむしっていた。ああ! ラーメン屋まであと十歩もなかったのに! よりにもよってこんな場所で羽沢さんと出くわすなんて! 
  
 「お散歩ですか?」 
  
  当の羽沢つぐみはいつも通りに軽やかな声を転がす。知り合い、先輩後輩、友人同士の世間話に興じようとする。普段であればなんとも思わないけれど、今の紗夜にとってのそれは天使のような笑顔を浮かべた悪魔のイジワルにしか思えない。 
  
 「ええ、まぁ……その、はい」 
  
  これが運命だというのだろうか。これが世界の選択だというのだろうか。 
  
  確かに先ほどは羽沢つぐみと出会ったらこれも運命だと割り切って諦めようとは思っていた。だけど、こんな、あとちょっとでたどり着く場所まで希望を持たせてこれはないでしょう! 
  
  紗夜の脳内で歌声が響く。ばっちりキマってるカッコいいMV。男性ボーカル。ラップ。こぞって探すelysionの扉、目前で逃す! 
  
  頭を抱えたくなる。必死で集め彷徨った空っぽのストーリーが、手のひらから笑って落ちていく綺麗に。そんな気分だった。 
  
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