42:名無しNIPPER[sage saga]
2020/03/19(木) 23:43:05.03 ID:z07AMiQQO
  
  ――コンコン、と、不意に響いたノックの音に、頭に浮かぶ過去の風景画が色を失う。 
  
 「おねーちゃーん、まだ起きてるよねー?」 
  
  続いて聞こえたいつもの明るい声と、返事も待たずに開かれる扉。その先には、右手に大きなビニール袋を下げて、左手にグラスを二つ持った日菜がいた。 
  
 「起きてるわよ。何か用?」 
  
  いつも通り、少し呆れたように声をかける。 
  
 「うん! お酒飲も、おねーちゃん!」 
  
  するとそんな言葉が返ってきた。それにやっぱり私は呆れるしかない。 
  
 「お酒って、私たちはまだ十九歳よ」 
  
 「一日くらい誤差だよ、誤差! 閏年とかあるんだし!」 
  
  日菜は聞く耳を持たず、笑顔でそう言う。閏年は増えた一日も含めて一年でしょう、と返したくなるけれど、やめる。こういう時の日菜はどうあっても引かない。私が本気で嫌がることでなければぐいぐいと要望を押し通す。それが分かるから、言葉の代わりにため息と首肯を返した。 
  
 「わかったわよ」 
  
 「そうこなくっちゃ!」 
  
  ぱたぱたと上機嫌な足取りで、日菜は私の部屋に足を踏み入れる。そして、部屋の中央に設けてあるローテーブルの上にビニール袋とグラスを置いた。 
  
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