【鬼滅の刃】鮭大根【ぎゆしの】
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1:名無しNIPPER
2020/03/20(金) 21:31:58.50 ID:N9Z2+gYcO
「義勇さんの好きな食べ物ってなんですか?」

 ある日の任務の帰り道、炭治郎と義勇はたまたま出会い帰路を共にしている。というのも、二人とも目指す場所は蝶屋敷なのである。炭治郎は同期である善逸と伊之助がまだ治療を受けているのでお見舞いに。義勇の方は傷薬の軟膏が無くなったので補充をするために蝶屋敷に向かっていた。

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2:名無しNIPPER
2020/03/20(金) 21:33:05.51 ID:N9Z2+gYcO
 そんな中唐突に炭治郎が話題に出したのが好きな食べ物の話。話題としてはよくある部類だろう。義勇の方は口下手なので、こうして自分から話しかけてくれる炭治郎のような存在はありがたかった。



3:名無しNIPPER
2020/03/20(金) 21:33:38.86 ID:N9Z2+gYcO
「…鮭大根」
「へぇ、そうなんですね!今日は蝶屋敷でご飯をご馳走になるんですか?」
「?」

 話が繋がらない。なぜ鮭大根が好きだと言ったら蝶屋敷で夕飯を食べることになるのだろう。義勇がそう思案していると、それを察したのか炭治郎が更に続ける。


4:名無しNIPPER
2020/03/20(金) 21:34:11.15 ID:N9Z2+gYcO
「いや、今日の夕飯は鮭大根だそうなので…」
「何!?」

 柄にもなく大きな声を出す。これには弟弟子で義勇と比較的長い時間関わってきたと思っていた炭治郎でも見たことのない姿だった。



5:名無しNIPPER
2020/03/20(金) 21:34:38.62 ID:N9Z2+gYcO
「…すまない」
「いえ、ちょっと驚いただけです」

 よっぽどお好きなんですね。と続けられると義勇はバツの悪そうな表情を浮かべる。これで弟弟子の前では気取っていたかったのだろう。無口で口下手と言われる義勇だが、気を許した相手には意外と表情は雄弁なのだ。


6:名無しNIPPER
2020/03/20(金) 21:35:14.00 ID:N9Z2+gYcO
「けど珍しいですよね、鮭大根って。何かきっかけがあったんですか」
「…姉の得意料理だった」

 聞いてから炭治郎は『しまった』と思った。義勇の姉は祝言をあげる前日に義勇のことを庇って亡くなっている。辛い記憶を思い出させてしまったかもしれない。



7:名無しNIPPER
2020/03/20(金) 21:36:06.84 ID:N9Z2+gYcO
「…気にするな」

 炭治郎の表情を読み取ったのか、義勇が声をかける。

「鮭大根は姉さんの得意料理だった…俺は姉が好きだったから…好きな人が作ってくれる料理ほど旨いものはない」
以下略 AAS



8:名無しNIPPER
2020/03/20(金) 21:36:48.10 ID:N9Z2+gYcO
「水柱様、炭治郎さん、おかえりなさい」

 そんな話をしていると蝶屋敷にたどり着いた。この屋敷に常駐し、家事や治療を取り仕切っている神崎アオイが挨拶を述べる。



9:名無しNIPPER
2020/03/20(金) 21:37:20.24 ID:N9Z2+gYcO
「ただいま戻りました!」
「…あぁ」

 こういう時に同じ流派でも、差が出てくる。人当たりの良い炭治郎と人付き合いの苦手な義勇では致し方ないことだ。

以下略 AAS



10:名無しNIPPER
2020/03/20(金) 21:37:55.36 ID:N9Z2+gYcO
「え?はい…構いませんよ。そのつもりだと思いますし…」

 少し不思議そうな顔をしてアオイが応える。

「…ありがとう」
以下略 AAS



11:名無しNIPPER
2020/03/20(金) 21:38:35.84 ID:N9Z2+gYcO
「せっかくの好物なんですから、もっと喜べばいいのに…」
「いや、大喜びしてましたよ」
「え?あれでですか!?」

 匂いのわかる炭治郎以外にはわからないくらいの差しかない表情は、けれども確かに笑みを浮かべていた。よっぽど楽しみなのだろう。
以下略 AAS



12:名無しNIPPER
2020/03/20(金) 21:39:01.95 ID:N9Z2+gYcO
「けど、凄いですね!鴉を飛ばしたのはついさっきだったのに、その間に義勇さんの分の夕食まで用意するなんて」

 義勇は元々は蝶屋敷に寄るつもりは無かった。傷薬の軟膏も柱である義勇が使うことは少ない。大概はその場に居合わせた平隊員の治療に使ってしまう。自分で使っているわけではないからか、無くなって初めて気がつくのだ。今回もたまたま居合わせた炭治郎の傷に塗ろうと取り出すと残りが僅かなことに気がついたのだ。そこから鴉を飛ばして時間にして一時間程。その速さでもう一人分の夕食を追加するとは、炭治郎はアオイの手際の良さに驚愕していた。


13:名無しNIPPER
2020/03/20(金) 21:39:32.92 ID:N9Z2+gYcO
「いえ、水柱様の分は元々作られていましたよ」
「ん?」

 ここで炭治郎はある違和感に気づく。

以下略 AAS



14:名無しNIPPER
2020/03/20(金) 21:40:03.32 ID:N9Z2+gYcO
「おかえり、炭治郎」

 そんな違和感に首を捻っていると、カナヲに声をかけられた。

「ん?あぁ、ただいまカナヲ!」
以下略 AAS



15:名無しNIPPER
2020/03/20(金) 21:40:30.70 ID:N9Z2+gYcO
「何故かわからないんですが、夕飯が鮭大根の日には水柱様がいらっしゃるんですよ」

 そんなことがあるのだろうか。にわかには信じがたい。

「アオイさんが鮭大根を作るのを義勇さんが察知してるんですかね?」
以下略 AAS



16:名無しNIPPER
2020/03/20(金) 21:41:27.17 ID:N9Z2+gYcO
「鮭大根だけは、毎回師範が作る…」
「しのぶさんが?どうして?」
「しのぶ様曰く、『これしか作れないんですよ』って…」

 なるほど、起きている時間の全てを鍛錬と鬼狩りに費やすのが鬼殺隊。しのぶはそれに加えて治療や毒の調合も行なっている。料理など勉強する暇などない。作れる料理が一つだけでも別段不思議はない。けれど…
以下略 AAS



17:名無しNIPPER
2020/03/20(金) 21:41:58.61 ID:N9Z2+gYcO
「どうして鮭大根なんだろう?」

 作れるのが鮭大根というのが引っかかる。決して作りやすい料理ではない。その上有名なわけでもない。そんな料理だけが、どうして作れるのだろうか。


18:名無しNIPPER
2020/03/20(金) 21:42:29.23 ID:N9Z2+gYcO
「さぁ…そこまでは…」
「それに…」
「お!権八郎じゃねーか!勝負しろ!」
「おい!止めろよ!伊之助!」

以下略 AAS



19:名無しNIPPER
2020/03/20(金) 21:42:56.95 ID:N9Z2+gYcO
「それよりほら、もう風呂入らないと夕飯に間に合わないぞ?」
「あ!?もう、そんな時間だったのか!」

 善逸の一言でふと我に帰る。随分長い間話をしていたようだ。三人は夕飯を食べる前に風呂に向かうことにした。


20:名無しNIPPER
2020/03/20(金) 21:43:27.47 ID:N9Z2+gYcO
「がははは!俺が一番だ!」
「こら、伊之助!廊下は歩かないとダメだろう?」

 風呂から上がるなり、伊之助は走り出して一目散に食堂に向かっていった。炭治郎は最初、まだ脚の怪我が治っていない善逸を助けて一緒に行こうとしたが。善逸の方から

以下略 AAS



21:名無しNIPPER
2020/03/20(金) 21:44:09.42 ID:N9Z2+gYcO
「…」
「あら、伊之助くん、炭治郎くん、いらっしゃい」

 食堂には義勇としのぶが居た。しのぶの方は食べ終わっていたが、義勇の方はまだ鮭大根を残していた。



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