ターニャ・フォン・デグレチャフ「私は副官の無防備さを甘くみていたらしい」
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1:名無しNIPPER[sage saga]
2020/03/26(木) 22:19:43.75 ID:rJNbqli6O
「総員、傾注!」

早朝。第二〇三航空魔導大隊の隊舎にて。
ザッと、軍靴が一斉に揃う音が広間に響く。
副長の号令を受け、総員は沈黙し耳を傾ける。
昨晩の宴会の名残か、酒臭い隊員が多いもののその規律には一切の綻びは見られなかった。
専用の台の上に立つ、大隊長が口火を切る。

「諸君。本日未明、由々しき事態が発生した」

由々しき事態。物騒な響きに隊員が凍りつく。

「隊の中で盗難事件が発生した。被害者はセレブリャコーフ少尉。盗まれたのは下着である」

大隊長付きの副官の下着の盗難事件。
これには帝国軍が誇る精鋭にも動揺が生じた。
あるものは狼狽え、あるものは憤り。
身の潔白を周囲に喧伝する者すら出る始末。
舌打ちする大隊長に代わり、副長が一喝する。

「黙れ! 大隊長の話はまだ続いている!」

それだけで、嘘のように静まり返る広間。
伊達に阿鼻叫喚の戦場を経験してはいない。
彼らは知っている。何よりも恐ろしい存在を。

「さて、我が親愛なる大隊戦友諸君」

全隊員の脳裏に同じ言葉が浮かぶ。『悪魔』。

「端的に言って、私は猛烈に怒り狂っている」

あ、終わったと、誰もが思った。
自分たちは戦場で死ぬのではない。
今ここで、隊舎の中で命を落とすと理解した。

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2:名無しNIPPER[sage saga]
2020/03/26(木) 22:23:18.23 ID:rJNbqli6O
「諸君らも知っての通り、セレブリャコーフ少尉と私は共にライン戦線で死線を潜り抜けて今日まで生き抜いた、それはそれは長い仲だ。当然、私は部下として少尉のことを信頼しているし、副官としてはもはやかけがえのない存在とすら言っても過言ではないだろう」

知っている。それは全隊員の周知の事実。
だからこそ、少尉には誰も手が出せない。
そんや神聖不可侵な少尉は今更頬を染め。
以下略 AAS



3:名無しNIPPER[sage saga]
2020/03/26(木) 22:27:12.79 ID:rJNbqli6O
「ふん。どうやら女性用下着を身につける度胸がある変態は我が隊には居ないらしい。それは喜ばしい限りであるが……ノイマン中尉」
「は、はっ!」
「これはなんだ?」
「それは大隊長殿のブロマイドであります!」

以下略 AAS



4:名無しNIPPER[sage saga]
2020/03/26(木) 22:30:20.57 ID:rJNbqli6O
「私の記憶によると、たしか貴様はセレブリャコーフ少尉と親しくしていたと思うが……」
「はっ! 親しくさせて頂いております!!」
「それで今回の犯行に及んだというわけか?」
「はい、いいえ! 大隊長殿! 自分には一切身に覚えがなく、心当たりもありません!!」
「ええい、見え透いた嘘を吐くなっ!!」
以下略 AAS



5:名無しNIPPER[sage saga]
2020/03/26(木) 22:34:23.14 ID:rJNbqli6O
「チッ。絶対にグランツだと思ったのに」
「これで捜査はふりだしに戻ったわけですか」
「ヴァイス大尉。貴官は誰が怪しいと思う?」
「小官は、ケーニッヒ中尉が怪しいかと」

以下略 AAS



6:名無しNIPPER[sage]
2020/03/26(木) 22:37:22.14 ID:dCYw0gAWO
まーた糞SSだよ(褒め言葉)


7:名無しNIPPER[sage saga]
2020/03/26(木) 22:38:05.29 ID:rJNbqli6O
「これでめぼしい隊員は調べ尽くしたな」
「しかし、結局見つかりませんでしたな。やはり今回の事件は外部の人間の犯行では?」
「いや、そう決めつけるのはまだ早い。まだ1名ほど、取り調べを受けていない隊員がいる」

尊厳を奪われ泣き崩れる隊員達を睥睨しつつ、ヴァイスと言葉を交わしていた少佐は不意に。
以下略 AAS



8:名無しNIPPER[sage saga]
2020/03/26(木) 22:41:00.97 ID:rJNbqli6O
「それで、ヴァイス。何故こんな真似を?」
「しょ、小官には身に覚えがなく、何が何やらわからないとしか申し上げられません……」
「ふん。そんな言い分がこの先軍法会議の場でも通用すると思うなよ? 心証を少しでもよくしたいと思うなら調書の作成に協力したまえ」

拘束したヴァイスを別室に連行して犯行に至った動機を引き出そうとするも、彼は知らぬ存ぜぬを繰り返すばかりで埒があかなかったので。
以下略 AAS



9:名無しNIPPER[sage saga]
2020/03/26(木) 22:43:44.37 ID:rJNbqli6O
「あの、少佐殿。ひとつだけよろしいですか」
「なんだ、グランツ。言ってみろ」
「実は昨夜、我々はヴァイス大尉と一緒に酒を飲んでいまして。その際、大尉はかなり泥酔していました。記憶の混濁はそれが原因かと」

なるほどと、デグレチャフ少佐は得心がいく。
以下略 AAS



10:名無しNIPPER[sage saga]
2020/03/26(木) 22:46:58.05 ID:rJNbqli6O
「まったく! ひと騒がせな!」
「あぅ……も、申し訳ありません」

ヴァイスたちを帰し、白パンツを白旗と間違われて回収された副官を少佐は厳しく叱責した。

以下略 AAS



11:名無しNIPPER[sage saga]
2020/03/26(木) 22:51:20.07 ID:rJNbqli6O
「ふぅ……おや?」
「ひっく……えっく」
「やれやれ、少尉は相変わらず泣き虫だな」

狂ったように愉悦と哄笑をぶち撒けて部下を怯えさせた挙句に泣かせたのは紛れもなく少佐のせいなのだが、こんな時だけは優しかった。
以下略 AAS



12:名無しNIPPER[sage saga]
2020/03/26(木) 22:54:13.04 ID:rJNbqli6O
>>6
いつも汚いお話でごめんなさい!
それでも読んでくれた読者の皆様に心からの感謝を!
最後まで読んでくださり、ありがとうございました!


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