王馬「大変だ!オレが行方不明になっちゃった!」
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39: ◆DGwFOSdNIfdy[saga]
2022/05/15(日) 01:27:05.92 ID:BaqouWXz0
百田「初めてだったんだよ…未来に希望を持ったのは。超高校級の宇宙飛行士になってからというものの、世界は目に痛いくらい色鮮やかになった」

百田「少し前まで、勉強して知識を得ても別に宇宙を好きになれなかった。よく分からなくてなんだか怖いところだとすら思ってた。星空を見上げて、壮大さに心打たれた事すら無かった」

王馬「ダンガンロンパに参加してなければ、この先ずっと宇宙を好きになる機会なんて無かったかもね」

百田「ああ。宇宙はあんなに自由で、無限の可能性があるってのによ」

王馬「そうだね。今のオレたちには可能性なんて─」

百田「あるさ。テメーが信じさえすればな」

王馬「……」

百田「『実績を達成しないと先に進めない』んだったか?才囚学園の広さなんてたかが知れてるのに、どこかしら行くアテでもあるのかよ」

王馬「ううん、敷地内はもうひと通り見ちゃった」

百田「じゃあ次は宇宙だな!」

王馬「無茶言わないでよ」

百田「無茶かどうかはやってみてから判断したって遅くねーだろ」

王馬「百田ちゃんがひとりで悪足掻きするのは勝手だけど、それをオレに押し付けないでよね」

百田「ま、流石に宇宙は遠いが、少し近付くくらいだったら幾らでもやりようはある」

百田くんは徐ろに背を向けて歩き出し、プラネタリウム装置の脇にある円窓を開け放った。

百田「実はここから屋外に出られるんだ。場所が場所なだけに景色はアレだけどよ…宇宙に近付いたって思えば悪い気はしないぞ」
 
王馬「みんながみんな百田ちゃんみたいに単純じゃないんだよ」

百田「人を探してるんだろ?ならひと目で中庭全体を見渡せたら効率がよくなるんじゃないか?」

王馬「中庭も裏庭も他の建物もとっくに調べたんだって」

百田「もう1回調べてみろ。入れ違ってないとも見落としが無いとも限らねーんだから」

王馬「百田ちゃんの言う通りにするのはなんか癪だけど、そうするしか無いのも事実なんだよね。…じゃあちょっと行ってくる」

小柄な王馬くんは出入りには不便そうな円窓を難無く潜り抜けた。僕も後に続く。


少しひんやりした風が全身を撫でるように吹き上げる。高所恐怖症ではないが、周りに囲いが一切無く不安を感じる。

すっかり日が暮れて、どこもかしこも地明かりのアンバーに染まっている。仮に王馬くんかも知れない人が来ても、顔は遠くて判別し難いし髪や制服の色は普通と違って見えるしで困る─という事は無かった。

王馬「うーん、誰もいないね」

そう、本当はここには誰もいない。バカバカしいと判っているのにいつまでこんな事を続けるのだろう。

彼の振る舞いも嘘そのものも悪ではない。だからこれは罰じゃない。強いて理由を挙げるなら単純に見苦しかったから僕は目の前の背中を突き飛ばした。


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